コラム

時代遅れでポンコツのアメリカ大統領選挙はこう変えよ

2020年11月08日(日)09時00分

NW_POT_02.jpg

パフォーマンス 選挙集会で支持者の歓声に応えるトランプ(10月28日、アリゾナ州)

ここで、選挙戦は第2段階に進む。その後の選挙戦でリーグAの候補者はメディアで大きく取り上げられるし、リーグAのテレビ討論会は視聴率が高くなり、候補者の発言も厳しくチェックされるだろう。その結果、派手なキャッチフレーズやツイッターで毒舌を発する人物ではなく、大統領として成功するために重要な資質の持ち主が高く評価されることが期待できる。

ただし、そのためには、テレビ討論会の在り方を変えなくてはならない。とっさに簡潔で効果的な言葉を発する瞬発力を問うような討論会ではなく、候補者の知性と知識を問い、意見が異なる人たちを説得する能力を試すような討論会にすべきだ。

「中国と国境を接している国の中で、アメリカの外交政策にとって最も重要な国はどこだと思いますか。その国のリーダーは誰ですか」「あなたは、医療保険改革法の延長に賛成票を投じました。それが正しい判断であると、反対意見の持ち主をどのように説得しますか」。例えば、このような問いを候補者に投げ掛けてはどうだろう。

テレビ討論会での振る舞いが有権者にどのように評価されたかに基づいて、候補者は上位リーグに昇格したり、下位リーグに降格したりする。第1段階の終了時にリーグAに位置付けられていた候補者でも、討論会で失態をさらせばリーグBに降格する可能性がある。逆にリーグDだった候補者も、討論会で目覚ましい成果を挙げれば最終的にはリーグAまで上り詰めることもあり得る。

大統領選でこのようなプロセスを採用すれば、有権者が大統領を選ぶ権限を一切奪うことなく、候補者の資質をもっと厳しく審査できる。これにより、大統領に必要な能力を最も十分に備えた候補者が選挙戦で有利になる。メディアで大きく取り上げられて、有権者の注目を集めやすくなり、リーダーとしての信頼性も高まる。

アメリカ人は、勝者を好む傾向が強い国民だ。派手な政治パフォーマンスが得意な人物でも、第1段階で下位のリーグにランク付けされて、その後のテレビ討論会でも精彩を欠けば、有権者からまともに相手にされないだろう。一方、知名度や資金力が乏しい候補者でも、高い資質と手腕を持っていれば、その能力を評価されて最有力候補に躍り出ることができる。

大統領選のプロセスは、このように「よい大統領」になり得る資質の持ち主を選び出すものであるべきだ。選挙の達人が幅を利かせるものであってはならない。

<2020年11月10日号掲載>

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州外相がイランと電話会談、核協議復帰と紛争激化回

ビジネス

エア・インディア、事故契機に安全性高める取り組み強

ワールド

トランプ氏、G7日程切り上げ帰国へ 中東情勢に対応

ワールド

トランプ米大統領、イスラエルとイランの停戦を提案=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染みだが、彼らは代わりにどの絵文字を使っている?
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story