コラム

歴史的な米朝首脳会談が迷走した本当の理由

2018年06月09日(土)13時30分

会談中止を告げる書簡は政権内の「プロ」の権限強化につながっている Drew Angerer/GETTY IMAGES

<北朝鮮の若造にコケにされてはたまらない――トランプ「外交ショー」がドタキャン寸前になったのはトランプ本人の準備不足ゆえ?>

米朝首脳会談はいつ開催されるのか? 史上最も大げさな大統領が率いる政権にしては、トランプ政権の高官らの反応は意外なほど正直で控えめだった。

5月31日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の右腕とされる人物との会談を終えたマイク・ポンペオ国務長官は、記者の質問に次のように答えた。「明日結論が出るわけではないが、過去72時間で実質的な進展があり、米朝首脳会談の開催条件を決める方向に向かっている。トランプ大統領と金委員長の会談によって実質的な進展が期待できる方向に向かっている」

ポンペオは陸軍士官学校を首席で卒業し、ハーバード大学法科大学院を優等で修了。聡明で有能な交渉役として、トランプと金の応酬に付きまとう混乱について、示唆に富む心理的洞察を提供した。

米朝首脳会談の記念硬貨を先走って売り出し、「ノーベル賞」とはやし立てられた大統領に率いられている政権が、どうしたら予定していた会談をあんなふうにキャンセルできるのか。自分の能力不足も敗北も認められない高慢な男が、どうして何週間も首脳会談の成功を大っぴらに豪語していながら、金宛てに会談中止を告げる書簡をしたためることができたのか。ポンペオの発言が全てを物語っている。

過去10年間で最も待望された地政学的サミットを中止に追い込む要因として、評論家のほとんどは対北朝鮮強硬派のポンペオや超タカ派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響力に焦点を当てているが、本当の原因ははるかに単純で心理的だ。要するにトランプは準備ができていなかったのだ。

自分の面目が何より大事

ポンペオの発言はトランプと金の双方の準備が確実に整う必要があると指摘しているが、ポンペオの役目はシンガポールで対決したときにトランプが確実に北朝鮮の若き指導者をたたきのめせるようにすることだ。会談の条件が自分に有利ではなかったため、トランプは二の足を踏んだ。歴史を振り返っても、公の場でのパフォーマンスやメディア事情にトランプほど精通している人物はほとんどいない。このままではコケにされると直観的に悟ったのだ。

功績を上げた人物や英雄とたたえられた人物(共和党のジョン・マケイン上院議員やバラク・オバマ前大統領など)をトランプが攻撃するのは、実は気弱さの裏返しだ。全世界が注視するなか、トランプはプライムタイムのニュースに登場する準備ができていないと政権関係者が噂していることを聞き付けたのかもしれない。最初の妻との間に儲けた次男と同じ年頃の若造との対決に敗れたりしたら、トランプの面目は丸つぶれというわけだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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