コラム

写真がゴミのように消費され、東洋が異質なものとして見られる時代に

2018年09月28日(金)12時10分

From Serkan Çolak @serkanncolak

<トルコの写真家セルカン・コラックのインスタグラム作品は「ビジュアルダイアリー的なもの」。しかし、潜在的に2つの写真哲学が大きく存在している>

今回取り上げるInstagramフォトグラファーは、トルコの南西部で生まれ育ち、現在は同国西部のイズミールに在住する37歳のドキュメンタリー写真家、セルカン・コラックだ。写真は独学で習い、本職は中学校の体育教師である。

インスタグラムで発表されている彼の作品は、中近東の写真家に多く見られる典型的なスタイルと言っていいかもしれない。白黒写真で、光を効果的に扱った構図を持ち、構図の中でそれぞれの要素――つまり、メインの被写体やサブの被写体とのセパレーション――を効果的に捉えている。

ただし、これまた同地域に多く見られる、明暗をハイコントラストにしてシャープな美しさを最大限に狙った写真ではない。むしろ、コントラストは弱い。彼自身も耽美的な完全性を目指しているのではないという。ユーモラスな感覚や謎めいたニュアンスも写真に取り入れている。

加えて、メッセージやテーマを前面に強く押し出したプロジェクト的な写真でもない。そうした作品は、仲間たちと作った写真集団MAHZEN (www.mahzenphotos.com) を通して別に発表しているのだという。

むしろ、インスタグラムでのコラックの作品は、彼がインタビューで答えてくれたように、彼自身のビジュアルダイアリー的なものだ。彼の周りにあるトルコの日常を、彼が無意識に反応して切り取ったものである。それは、押し付けがましさのない穏やかな感覚を生み出し、作品に流れるある種の反完全主義的な要素と混ざり合い、見る者を心地よくさせてくれる。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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