コラム

通信社的な職人芸から生まれた、ミニマリズムのインスタグラム

2018年08月24日(金)16時00分

gabrielbouysさん(@gabrielbouys)がシェアした投稿 -

同時に、ディテールのインパクトをより強めるために、写真全体としては単純化している。それも抜群の距離感で。

例えば、1枚目(冒頭)のアゼルバイジャンのバクーの庭師の写真だ。望遠レンズを使って、近づきすぎることなく、少し引き気味で撮っている。それが庭をいくつかにかたどっている建築物のリズムと庭師との繋がりを効果的に見せる。それだけでなく、庭師のホースから放水されている水しぶきというディテールに焦点を当ててシャッターを切っているのである。

無論、クローズアップすれば水しぶきはよりインパクトが増すが、それでは庭師の周りにある他の要素との心地良いリズミカルな関連性は壊れてしまう。

4枚目の、彼の生まれ故郷のベジエで撮影された風景のシーンも、際立ったミニマリズムとディテールが描写されている。牧歌的な様子をシンプルに、かつパノラマ的に捉えながら、同時に、写真の中では小さく自転車で走り過ぎて行く子供を逆光で印象的に浮かび上がらせている。

ブアにとってインスタグラムは、AFPの仕事と全く違った側面を持っている。AFPの仕事では、既に述べたように、情報と締め切りを切り抜けるスピードが重視される。基本的にはカラーで撮影しなければならない。

だがインスタグラムは、彼の言葉を借りれば、自由だ。時間に追われることもないし、白黒撮影もフィルター使用も問題ないのである。実際、インスタグラムでの最近の彼は、iPhoneとHipstamatic(ヒップスタマティック)のアプリも使用して作品を発表し始めている。

通信社タイプの写真家として培ってきた感覚とテクニックに加えて、インスタグラムでは光と雰囲気をより重視しながら、新たなチャレンジを行なっているのである。それが彼のクリエイティビティーを回転させ、さらに、今も10代の頃のように写真に対する情熱を持ち続けさせているのだと彼は話す。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Gabriel Bouys @gabrielbouys

gabrielbouysさん(@gabrielbouys)がシェアした投稿 -

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、日本と中国の工場で年末年始に稼働停止・減産

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ビジネス

英CPI、11月は前年比+3.2%に鈍化 3月以来

ワールド

中国訪日客、11月は3.0%増に伸び大幅鈍化 長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story