コラム

第3次石油ショック(?)への日本の対応を考える

2026年03月04日(水)14時40分

ですが、仮に第3次石油ショックでエネルギー価格が高騰するのであれば、今度こそ「脱製造業のその先」を見据えた国家戦略が必要です。具体的には、改めてハードウェアからソフトウェアへ、そして金融立国ということです。

2点目はAI戦略です。AIの生命線はデータセンターで、巨大な電力ニーズを伴います。セキュリティーを考えると、ある程度はデータセンターを国内に設置することは必要です。ですが、仮にエネルギーコストが長期にわたって安定しないのであれば、電力を食うデータセンター設置は最小限にして、日本のAIはアルゴリズムとアプリケーション(実装、実用化)で勝負することになると思います。そのためには、英語と数学を高度に学んだ若者を生み出すように、教育システムの抜本的な改革が求められます。


3点目は観光立国です。長期にわたって原油価格が高騰するのであれば、航空運賃が高止まりします。そうすると、現在のように幅広いインバウンド観光客が押し寄せる現象は落ち着いてくるでしょう。それでも、日本のカルチャーの魅力は国際社会では色あせることはないと思います。そうなった場合には、観光産業はより高付加価値の富裕層向けサービスにシフトするべきです。

ノウハウがないからとか、当面のキャッシュが欲しいなどの理由で、この分野についてはインフラを中心に設備の多くが外資に渡っています。運営ノウハウも外資が強い傾向があります。この流れを何としても止めて、国内資本による高付加価値な観光業を徹底的に育成して、リターンが国外に持ち出されないようにするべきでしょう。

財政規律が緩いと見られれば金利高、円安が暴走しかねない

4番目は軍需産業への傾斜を減速することです。軍需産業の弊害は平和イデオロギーとの摩擦だけではありません。そうではなくて、大規模な官需であって自由競争に「もまれない」こと、そして「同盟国だけの限定的な商売」であり、「仮想敵国は市場にならない」というデメリットがあります。さらに、機密管理のベールに包まれると、同じ技術が民生転用できなくなって、経済的には巨大な損失になる危険もあります。有事であるからこそ、軍需産業依存という「傾いた製造業の安易な甘え」は抑制していかなければなりません。

5番目は、これは産業構造とは少し違いますが、徹底した行政改革を行うべきです。みんなの党の流れを汲む維新勢力が与党に加わっている今こそ、官公労の利権と、ハコモノの両面から歳出にメスを入れるべきです。現在は、社会保険料と議員定数ばかりが話題になっていますが、あらためて国の機能の全般に渡る「小さな政府」化を進めることで、財政規律を維持するべきです。

財政規律が緩んだままで、第3次石油ショックに突入しては、アっと言う間に「GDPと国家財政への将来」に不信任を突きつけられる中での金利高、円安が暴走しかねません。とにかく原油高の中で円が際限なく下がっていっては、国として破滅の回路に入ってしまいます。財政規律を意識する国だという姿勢を国際市場に対して見せるためにも、行政改革を徹底するべきだと思います。

もちろん、今回の戦争の展開がどうなるかは全く読めません。ですが、現在の日本は微妙な立ち位置にあり、平和の仲介を行うことも、戦争に積極的に関与することも難しい立場にあります。ですから、今しなくてはならないことは、最悪の事態に備えた国家戦略を描いて必要な合意形成をしておくことだと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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