コラム

マドゥロ後のベネズエラ原油開発、日本の利権をどう考える?

2026年01月07日(水)15時00分

ですが、日本におけるオリマルジョンの活用は、最終的には成功しませんでした。関電は和歌山県御坊市に、北電は北海道知内町にそれぞれ、ベネズエラから輸入したオリマルジョンを主要な燃料とした火力発電所を稼働しようとしたのですが、反対キャンペーンによって潰されてしまったのです。具体的には、オリマルジョンは猛毒であり、界面活性剤を含むので海水に溶ける、したがって漏出事故が起きた場合には漁業に深刻な打撃となるという理屈でした。

実際はオリマルジョンを塩分を含む海水と混ぜた場合は、最終的に粒が壊れて油と水は分離し、油は表面に浮上するので、普通の重油と変わらないのですが、とにかくメディアを巻き込んだ反対キャンペーンが盛り上がってしまったのです。結果的に、御坊市の火力発電所では利用されず、知内町では利用がスタートしましたが、オリマルジョンの利用は限定的となりました。ちなみに、三菱グループはシンガポールにオリマルジョン発電所を建設する際に、技術供与をしています。


ただ、この三菱グループによるオリマルジョンのビジネススキームは、一旦はベネズエラ側(当時はチャベス政権)によってキャンセルされてしまい、その後は、オリマルジョン技術はベネズエラが他国と展開するようになっています。現在、ベネズエラが中国に原油を輸出していますが、こちらにもオリマルジョン技術が使われているようです。

その一方で、日揮が協力したような超重質油をナフサで薄める方法については、今後ベネズエラの石油産業を再生するのであれば、こちらの手法が軸になるという見方もあります。

では、こうした経緯を踏まえ、アメリカによる再建を目指すベネズエラの石油産業に対して日本はどう振る舞ったらいいのでしょうか。まず大前提として、ベネズエラにおける大規模な石油産業の復活というのは、簡単ではないと思います。

日本も可能な範囲で再建に寄与するべき

まず、シェールや多様なエネルギーとの価格競争の問題があります。さらに言えば、今はトランプ政権が温室効果理論を否定していますが、中長期的には化石燃料をモクモク焚く産業はやはり縮小してゆく可能性が高いと考えられます。ですから、仮にベネズエラの新政権やアメリカから、日本に対してこの案件での大規模投資を求められても、そう簡単には乗れないと思います。むしろ、投資を求められないよう政治的に立ち回るべきかもしれません。

仮に、それでもアメリカの同盟国や取引先に対して、薄く広く投資を要求されて、政治的に断れない場合は、2000年代までに日本が供与した技術や投資についてチャベス政権に接収された部分についてしっかり主張すべきです。具体的には、仮にアメリカがチャベス、マドゥロの両政権によって国有化という形で奪われた設備や技術について「債権を回収」する態度を取るのであれば、日本も同様に権利を主張すべきです。また改めて技術供与を求められるのであれば、しっかりと利益が出るスキーム、技術を他国に奪われないスキームで参加すべきです。

かつての日本は、途上国との二国間関係を大事にしており、仮にODA的な持ち出しになっても、あまりガツガツと権利主張しない傾向がありました。民間より、むしろ政治や外交がそうした姿勢を好んでいたからです。ですが、ベネズエラだけでなく日本もまた経済を立て直す局面に入っています。国益として主張すべきは主張しつつ、可能な範囲で同国の再建に寄与するというのが最適解ではないかと考えます。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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