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解雇規制緩和はジョブ型雇用とセットでなくては機能しない
本来なら30年前のバブル崩壊後に始めるべきだった議論 photoAC
<仕事を標準化すること、高度な業務のスキル教育を実現することが条件となる>
解雇規制緩和の議論が始まっています。この議論ですが、本来であれば、バブル崩壊後の変革期に始まっても良かったのです。少なくとも1990年代において、電算化と国際化の中で、対応のできない人材を別の分野に適正化させる一方で、新しい世代の若い労働力に入れ替える必要があったのです。仮にそうなっていたら、これだけの超長期にわたって日本経済が衰退することもなかったと考えられます。
では、解雇規制を緩和して、企業の社内も、また労働市場も完全に実力主義にしていけば、それが全体最適なのか、問題は単純ではありません。日本型雇用の硬直した制度が改革されさえすれば、全体が成長してゆく中で個々人にもトリクルダウンと機会の拡大という恩恵があるのかというと、そう簡単ではないのです。解雇規制の緩和を成功させるのには、どうしても一つの条件が達成されなくてはならないからです。
それは、スキルの標準化ということです。
わかりやすい例が旅客機のパイロットです。パイロットになるには免許が必要で、国家資格である操縦士免許と機種別免許が必要です。機種別というのは、例えばボーイングの場合は777とか787、あるいは737シリーズ、エアバスなら350などといったモデル別ということです。機種が異なれば操作方法も違い、機体のサイズなども異なるからです。
反対に同じ機種であれば、ある会社を辞めて別の会社に採用されても、機種が同じであれば同じようにパイロットとして働けます。どうしてかというと、同じモデルであれば機体が同じでコクピットの設計も同一だからです。つまり、機体が標準化されていることが大きいわけです。最近では、例えばボーイングの777と787については、操作方法が近いし機体サイズが似ているため、同じ機長が双方の機種に乗務する混合乗務というのがありますが、これも両者の操作方法がある程度は標準化されているからです。
「自己流」だった仕事のやり方を標準化する
このような「スキルの標準化」ということが成立していれば転職は容易になります。また、パイロットという職業がそうであるように、スキルが「事前に人についている」のであれば、労働市場における評価も客観的なものになるのです。
これをパイロットだけでなく、一般のオフィス、工場、店舗などの様々な職種において確立していかなければなりません。
そのためには、2つのことが必要です。
1つは、それぞれの企業や産業、あるいは官庁などが「自己流」でやっている仕事の進め方を相当程度に標準化することです。今でもあると思いますが、自分の会社の経理業務は長い歴史のある独特のものなので、大学で財務会計を勉強するなどの「色のついた人材」は困るという企業が結構あります。そうではなくて、地頭(じあたま)が良くて計数に強く誠実な人物を「白紙からOJTで鍛える」などと言うのです。
教育を企業がやってくれるので一見すると初心者でも活躍できそうですが、この種の育成方法では、スキルの過半が「その企業でしか役に立たない自己流」になってしまいます。これでは、そうしたキャリアは、どんなに立派でも他社では通用しません。
そうではなくて、経理などの間接部門だけでなく、商品管理、生産管理、物流などの現場の仕事もある程度標準化して、その分野での経験が他の企業でも活かされるようにするべきです。これは社会全体でDXを成功させるためにも必須の条件です。
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