コラム

感謝祭休暇で感染がさらに拡大? 全米で5000万人が民族大移動

2020年11月24日(火)18時00分

防護服姿でロサンゼルス国際空港を移動する旅客機のクルー Lucy Nicholson-REUTERS

<実家の両親のもとに帰省して家族が集合する今週の感謝祭で感染再拡大の懸念>

アメリカにおける新型コロナウイルスの感染拡大は、3~5月に太平洋岸と東海岸、6~8月に中西部や南部で大きな「波」となりました。その後、10月以降は「第3波」とも言える段階に入っています。現在は、西部のサウスダコタ州やアイオワ州などで激しい感染拡大が起きているほか、一度は沈静化したはずの全国各地域で、再び感染が広がっています。

原因としては、西部の場合は保守系知事が「公共の場でのマクス着用指示」を拒んだり、レストラン、バー、スポーツジムの営業規制を行わないなど、政治的な要因が感染拡大を招いているという見方があります。

一方で、全国的な感染拡大については、例えばハロウィンや大統領選などの季節性のイベントで、どうしてもリアルな密集が起きたとか、大学生などの移動が止められないなどの問題があります。また季節が冬に向かう中で、レストランの屋内営業が盛んになるとか、冠婚葬祭などの行事が室内で行われるなどの要因も指摘されています。

数字を確認しておきますと、まず死亡者に関しては、1日あたり1000人弱のペースで(11月22日には843人、同日までの累計は25万7000人となっています。また、新規感染者は相変わらず1日当たり15万人弱(22日には14万1000人)で累計は1240万人強(11月22日現在)です。(ニューヨーク・タイムズ電子版による)

日本のお盆のようなもの

依然として非常に厳しい状況ですが、そんな中で今週26日には「サンクスギビング・デー(感謝祭)」の休暇がやってきます。この日は、日本で言うお盆のようなもので、成人して核家族を作っている世代が、実家の両親のところに帰省して大家族が集合する、そんな習慣があります。

家族が集まると、ターキーの丸焼きなど伝統的な料理でパーティーをします。感謝祭は木曜日ですが、その翌日の金曜日(ブラック・フライデー)も休暇となる場合が多く、この4連休が終わると社会は一気に冬に向かう、そんな風物詩でもあります。

問題は、パンデミックの中で今年の感謝祭がどうなるかですが、政府や各州は色々な指示を出しています。

まずトランプ大統領は、「バイデンが勝ったら感謝祭ができなくなる」などというメッセージを選挙戦を通じて振りまいていました。選挙の結果はともかく、大統領がこのような姿勢なので、保守派はパンデミックに「負けずに感謝祭を強行」という姿勢、一方でリベラル派は「今年はできるだけ身内で」という感じがあります。ただ、感謝祭に大家族が集結するというのは、非常に強い習慣なので、リベラル派であっても政治的な信念で断固自粛というわけにはいかない感じもあります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替、従来より物価に影響しやすいリスクを意識=植田

ビジネス

テスラ、独工場操業を1日停止 地元は工場拡張に反対

ワールド

イランとの核問題協議、IAEA事務局長が早期合意に

ワールド

インド総選挙、3回目の投票実施 モディ首相の出身地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story