コラム

トランプ巨額脱税疑惑、スキャンダルの本丸はその先の借金問題?

2020年09月29日(火)16時00分

まず、トランプのコア支持者の場合は、このスキャンダルで支持を止めるということはまずないでしょう。「権力と戦うトランプ、国税とも戦っている」とか「ニューヨーク・タイムズが書き立てた最悪のフェイクニュース」だという理解こそすれ、「税金を払っていないのでガッカリ」という反応はないと思います。むしろ「さすがトランプ、やることのスケールが違う」的な感じかもしれません。

問題は共和党の穏健層、そして無党派でアンチ民主党とかアンチ・バイデンといった票がどう反応するかということですが、こちらも限定的と思われます。「トランプなら、そのぐらいはやりかねない」というイメージは、かなり広範に浸透しており、この程度であればサプライズにはならないからです。

仮に、トランプにとってダメージになるとしたら、今回のスクープの中の脱税疑惑ではなく、このトランプ家の運営しているトランプ・オーガニゼーションという企業、つまりホテルやリゾート事業を展開する多国籍企業が、債務超過だという問題です。そして、トランプ自身が数億ドルの個人保証をしているローンが、ドンドン返済期限を迎えており、このままでは個人も法人も倒れるしかないという指摘です。

また、その借金については、アメリカの金融機関が全く相手にしない中で、ドイツ銀行が相当な額を貸しており、恐らくは個人保証では足りないので、外国勢力(記事ではハッキリ指摘していませんが、恐らくはロシア、サウジなど)に保証をしてもらっているという問題があります。つまり金を借りているために、外国勢力の言いなりになっている可能性が考えられます。

仮にこちらの疑惑が具体化してくれば、基本的には国家への裏切りになり、広範な層からの支持を得ることはできなくなるかもしれません。こうした疑惑が29日夜に予定されている第1回のテレビ討論会でどこまで掘り下げられるかは、1つの注目点です。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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