コラム

未成年性的虐待の被告の大富豪が拘置所で怪死、米メディアが大騒ぎする理由

2019年08月13日(火)14時30分

まず犯罪の舞台となった(であろう)場所が何とも派手です。例えば、ニューヨークのマンハッタンに持っている豪華コンドミニアムとか、カリブ海の米領バージン諸島内にある個人所有の島、あるいはフロリダのリゾートなどが舞台になっています。このうち、個人所有の「リトル・セント・ジェームス島」には、この8月12日にFBIの家宅捜索が入り、その様子が大きく報道されました。

具体的には、1980年代から数十人(一説には最低でも40人)の若い女性を人身売買で調達して性的虐待を繰り返していたという容疑があり、すでに複数の女性が被害を名乗り出ています。

トランプとの関係は極めて親しかったらしく、特に有名なフロリダの別荘「マールアラーゴ」を性的虐待の舞台にしていた可能性が指摘されています。また、トランプと「2人だけで大勢の女性をはべらせたパーティー」を行なっていた疑惑もあります。

トランプとの関係では、2007年にエプスタインが性的暴行の容疑で起訴されそうになった際に「検察との秘密の司法取引」を行って罪を免れたことがあります。その当時の検察官、つまり取引を行ってエプスタインの犯罪を不起訴にした検事の1人、アレクサンダー・アコスタという人物を、トランプ政権は労働長官に採用しているのです。アコスタについては、のちに経緯がバレて辞任を表明しましたが、エプスタインの犯罪をもみ消した人物が、どうして閣僚に抜擢されたのかという疑惑は晴れてはいません。

トランプの根拠なきツイートはともかく、エプスタインはビル・クリントンとも親しかったという可能性が指摘されています。クリントンの側近で2回の選挙を支えたジョージ・スファノポロス(現在はABCテレビのメインキャスター)もその交友の輪の中にいたという報道もあります。さらに、英国のアンドルー王子(エリザベス2世の子、チャールズの弟、王位継承権第8位)も「エプスタインの人脈」と言われ、犯罪関与の疑惑が取り沙汰されているのです。

そんなわけで、エプスタインについては「死人に口なし」になってしまったのですが、事件の全容については、今回のエプスタインの怪死という事態も含めて、謎が謎を呼ぶ展開になっています。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マレーシア首相、1.42億ドルの磁石工場でレアアー

ワールド

インドネシア、9月輸出入が増加 ともに予想上回る

ワールド

インド製造業PMI、10月改定値は59.2に上昇 

ワールド

ベルギー、空軍基地上空で新たなドローン目撃 警察が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story