コラム

未成年性的虐待の被告の大富豪が拘置所で怪死、米メディアが大騒ぎする理由

2019年08月13日(火)14時30分

未成年女性の人身売買などに関与した容疑で逮捕されたエプスタイン Shannon Stapleton-REUTERS

<拘置所内で死亡したエプスタインの交友関係には、トランプ、ビル・クリントン、英アンドルー王子も>

著名な億万長者であると同時に、多くの未成年女性を人身売買や性的虐待の対象とした容疑で逮捕・起訴されたジェフリー・エプスタインと言えば、アメリカではここ数カ月にわたって新聞やテレビのニュースで大きな話題になっていました。

もちろん、容疑そのものが悪質だったこともありますが、同時にエプスタインの交友人脈の中にビル・クリントンやドナルド・トランプの名前があることから、大規模な政治スキャンダルに発展する可能性があり、関心が高まっていたのでした。

先月7月6日に逮捕されてから、エプスタインをめぐって様々な動きがありました。7月の時点で問題になったのは弁護人からの保釈請求でした。弁護人サイドは、6000万ドル(約630億円)の保釈金を積んで、エプスタインの身柄を未決囚用の拘置所から自宅軟禁に移そうとしたのです。

これに対しては、「拘置所から出したら『消される』」といった陰謀論がネットで渦巻く中、最終的に保釈は認められませんでした。ところが、そのエプスタインは、逮捕から約1カ月後の8月10日(土)の早朝に、拘置所内で死亡しているのが発見されました。66歳でした。警察は、首を吊っての自殺と発表しています。

このニュースを受けて、メディアは騒然となっています。まず、エプスタインは、7月27日に自殺未遂を起こしていたそうで、その直後に24時間の自殺防止の監視を付けられています。ですが、なぜか2日後の29日にはその監視が解除されたというのです。

また8月8日には、弁護人が「エプスタインは精神的に安定したので、監視の厳しい房から出して欲しい」という申し立てをして、それが認められたそうです。そこで独房を移動したその晩に自殺したというのです。拘置所の規程に定められた「30分間隔での監視」もされていませんでした。

そんなわけで、現在でも「エプスタインは殺された」という各種の陰謀論が、ネットで飛び交っています。それどころか、合衆国大統領であるトランプ自身が「下手人はビルとヒラリー」だという陰謀説を、根拠なくツイートで拡散しているのです。事態を受けて、バー司法長官は「今後も原告のための真相究明を継続することには変わらない」と表明しています。

自殺か他殺かという疑問はともかく、では、エプスタインについては、いったいどんな疑惑があるのでしょうか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国産業相が近く訪米、ラトニック商務長官と会談へ

ワールド

タイ財務省、26年の成長率予想を2.0%に据え置き

ワールド

インドネシア大統領のおいが中銀副総裁に、議会が承認

ビジネス

基調インフレ指標、12月は3指標そろって2%下回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 10
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story