コラム

ジュリアーニはトランプの切り札なのか、それとも刺客なのか?

2018年05月22日(火)16時20分

2つ目は、ロシア疑惑問題です。ジュリアーニ弁護士は「トランプ陣営がロシアの諜報機関を使って、ヒラリーの違法行為を調査したのは事実だが、合法的」と述べたのです。これも爆弾発言で、違法でないという言い方ではありますが、どう考えても国の政治に外国を関与させたのは認めてしまったわけで、意味が良くわかりません。

3番目は、大統領周辺を捜査する特別検察官との間で「ロシア疑惑の捜査は8月末で打ち切り」の合意ができたと暴露したことです。「長引くと、11月の中間選挙の結果を歪めるおそれがあるので、8月末で合意した」というのですが、だったら「相当な材料がある」のかどうかはヤブの中です。

この3つの暴露ですが、どれも「大統領の代理人として大胆な正面突破を図っている」ようにも見えますが、要するに「大統領の嘘、大統領の不倫、ロシアを使った工作」そして「特別検察官の持っている切り札」について、どれも「認めた」格好になっているとも言えます。そこで、ジュリアーニ氏が、トランプ陣営に刺客として送り込まれたという見方まで出ているのです。

この「捜査の期限」が問題になったのと同時に、トランプ大統領は「2016年の選挙戦の際に、FBIがトランプ選対にスパイを入れていた」という告発をして、これも大きな話題になっていますが、その「FBIのスパイ」こそ、実はジュリアーニ氏だったという「説」まで飛び出しており、一体何が本当なのか大混乱しているような状態です。

また、昔は犬猿の仲だった保守系のFOXニュースへの出演を楽しんだり、保守系のクライアントを獲得して顧問料を稼いでいるという報道もあります。ですが、法律家としても、行政官としても超一流であった同氏が「ドナルド・トランプの忠臣」という評価で後世に伝えられるようなことは、どう考えてもあり得ない――仮にそう考えると何もかもが芝居じみて見えてくるのもまた事実なのです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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