コラム

北方領土問題をめぐる日本世論の2つの誤解

2017年02月09日(木)12時30分

この問題を前進させるには、やはり日本全国の世論の後押しがなくてはなりません。そのためにも「返還運動は対立を煽るものではなく、むしろ逆であること」そして「共同経済活動の進展は帰属問題を後退させるものではない」という2点について、あらためて正確な理解が広まることが必要だと思います。

長門会談の際には、多くの取材陣が根室を訪れて「領土交渉の今後」に関する取材をしていったそうです。ですが、それにもかかわらず、この2つの誤解を「解く方向」の報道は少なかった、地元ではそのような落胆の声も聞きました。

領土ナショナリズムというイデオロギーを動機としなければ、この問題への関心を喚起できないし、またイデオロギーを動機とするのであれば、どうしても対立的な発想になる、一般論としてそれは分からないではありません。ですが、地元での理解、そして現政権の国策は全く別のところにあるというのもまた、重要な事実なのです。このことが全国に伝わっていなければ、この問題は前進しないのではないでしょうか。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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