コラム

新世界オリンピックをつくろう

2020年03月13日(金)19時30分

真夏に開催することからしてアスリート・ファーストではないIOCのバッハ会長 Denis Balibouse-REUTERS

<新型コロナウイルス危機のあおりで、オリンピックは延期だ、いや予定通りだと議論が割れている。この機会にやめてしまえばいいのだ>

東京オリンピックの中止、延期が議論されている。

面倒なことになっている。

なぜなら、IOC(国際オリンピック委員会)という権力がその権力を振り回し、米国放映権を中心とした利権をめぐるビジネス関係者が商業的利益確保を最優先させ、そのカネのおこぼれにあずかりたいオリンピック関係者、美しいという建前に守られている世界中の競技団体の一部は(あるいは多くは)そのカネ、そして競技団体という利権を守るために(もちろん選手のため、競技のため、と心から思っている関係者もいるが、それを建前として使っている人たちもいる)、奔走しあるいは動かず、オリンピックはしがらみと利権にまみれ、崩壊寸前になっている。

そんな面倒なオリンピックはやめてしまえ。

真夏開催はアメリカの都合

以前から主張している通り、私は、東京オリンピックは要らない、スポーツ選手を利用した(彼らにたかった)商業イベントは要らないと思っている。少なくとも開催地は、IOCの権力維持のためにIOCが選ぶ権利を持つのではなく、一定規模の経済力を持つ国あるいは都市で持ち回りにすれば、決定権という利権が失われると主張してきた。

しかし、近年のオリンピックでは、私の想像をも超えた堕落が進んでいる。マラソンの開催場所の議論でもわかるように、そもそもかつての東京オリンピックが10月10日の体育の日に行われたように、秋にやるべき、つまり、競技にとってもっとも適した季節に行うべきであるが、それを米国のバスケットボール(NBA)やフットボール(NFL)の都合で、米国プロスポーツの合間の、水泳以外のすべての競技にもっともふさわしくない真夏にやることになっている。

今回の新型コロナ騒動による1年延期提案も、普通に考えれば、10月に3カ月延期などの選択肢の方がすべての面で望ましいはずだが(延期期間はできるだけ短い方がよく、あまりに短期の延期だと再延期のリスクがあり、それは非効率なので、3カ月がもっとも妥当であろう)、その線はほぼゼロで、やはり米国でのテレビ中継利権が優先される。これはIOCにとってこそ重要で、このカネがすべての力の源泉だから、IOCこそ10月開催には反対なのだ。

要は、選手は利用されているだけ、ビジネスの祭典に世界のオリンピックファンも(こそ)利用されているだけなのだ(テレビを見ることによって彼らに富を与えている)。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで約4年ぶり安値、米財政

ワールド

米特使「ロシアは時間稼ぎせず停戦を」、3国間協議へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 8
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story