コラム

新型コロナショック対策:消費税減税も現金給付も100%間違いだ

2020年03月19日(木)17時29分

消費減税コールも響く中、安倍晋三首相は?  Issei Kato-REUTERS

<政治がやるべきは、本当に困った人をピンポイントで救うことと、できるだけ早くコロナ危機脱却を宣言することだ>

必要なことは需要創出ではない。

だから、まず、金融緩和ではまったくない。

金融緩和とは、金利を下げて、借入れをしやすくして、投資や消費を刺激することであるが、専門家より素人の方が素直に理解しているように、これは現在ではまったく無意味だ。

コロナショック前から、金融政策が効かないのはコンセンサスになっていた。金利が既にゼロまで下がっていて余地がないこと、需要は十分にあり、むしろ過熱が問題で、人手不足などの中長期の供給制約が問題であり、その問題には金融政策は効果がないことから、もはや金融ではなく財政だ、という議論になっていた。

このような状況でコロナショックが起きた。需要が一変に消えた。

米国中央銀行は利下げを行いゼロ金利とし、国債の買い入れ、つまり量的緩和も再開した。しかし、まったく効果がなく、株価がこの政策の発表と同時にさらに暴落した。日本銀行は、同じ日に、株式ETFとREITの買い入れ枠を倍増させることを緊急会合を開いて決定した。これも評判が悪く、株価を支えるために株式を大量に買い入れることにしたのに、株価の暴落は止まらなかった。

一方、政治家たち、自称専門家たちは、これらをみて、ほらみろ、金融は効かない。もはや財政出動を大規模に大胆に行うしかない、消費税減税をしろという声や、現金を国民に配れ、という主張などで大騒ぎである。

どちらもやめた方がいい。

消費減税議論は日本だけ

効果がない上に、目的が間違っているからだ。

まず、消費税減税は最悪である。

第一に即効性がない。消費税率の引き上げにあれだけ大騒ぎして、混乱を防ぐために大論争を行い、徹底的な周知徹底を行い、準備期間を取り過ぎるくらいとった。それでも混乱は生じたし、国民に納得感はない。新型コロナによる経済ショックに対する対応としては、迅速性が最優先されるので、消費税減税はもっとも不適切な政策である。これは人々が消費税が嫌いであることを利用して人気取りをするための主張に過ぎない。実際、諸外国でも減税の議論はされているが、消費税減税を行うという主要国はない。そもそも消費税とは長期安定性が重要で機動性に欠けるから、税率の引き上げタイミングや一時的な引き下げを議論するものではなく、それだったら、所得税減税か、給付金を配る方が適している。

一方、その給付金であるが、これは景気対策としては意味もあるし、即効性もあるが、今回のコロナショックにおいては、効果は普通の不況に比べて半減しているし、望ましくない。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story