コラム

フィリピン次期大統領ドゥテルテ氏、意外に深い華人とのつながり

2016年05月10日(火)15時45分

 また、華人に対するアキノ大統領自身の姿勢も厳しかったとされる。呉氏が強く印象づけられたのは、在任中のアキノ大統領がフィリピン最大の華人団体である「菲華商人総会」において、華人たちが脱税や逃税に熱心で、納税の義務を果たしていないと批判したことだった。お金の話には、華人はとりわけ敏感だ。アキノ氏にも華人の血が流れているとされるが、この「脱税批判」発言以後、華人社会ではアキノ大統領への不信が固まったという。

「わたしたち華人が求めているのは、法的にも制度的にも公平で、治安もよい安定的な環境のもと、経済活動に存分に集中できることと、中国とは激しい喧嘩をしないことです」と、マニラで会った40代の華人ビジネスマンは語った。もちろん世代間や個人で考えに違いはあろうが、総じていえば、そんな華人特有の心理が、今回、フィリピンの大統領選において、華人を相対的にドゥテルテ支持の方向に導いたと見ることもできるかもしれない。

※「フィリピン人口の5000万人」を「フィリピンの有権者人口の約5000万人」に訂正しました(5月17日)

プロフィール

野嶋 剛

ジャーナリスト、大東文化大学教授
1968年、福岡県生まれ。上智大学新聞学科卒。朝日新聞に入社し、2001年からシンガポール支局長。その間、アフガン・イラク戦争の従軍取材を経験する。政治部、台北支局長(2007-2010)、国際編集部次長、AERA編集部などを経て、2016年4月に独立。中国、台湾、香港、東南アジアの問題を中心に執筆活動を行っており、著書の多くが中国、台湾でも翻訳出版されている。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)『銀輪の巨人』(東洋経済新報社)『蒋介石を救った帝国軍人 台湾軍事顧問団・白団』(ちくま文庫)『台湾とは何か』『香港とは何か』(ちくま新書)。『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。最新刊は『新中国論 台湾・香港と習近平体制』(平凡社新書)

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