最新記事
シリーズ日本再発見

世界最古級の「千年企業」が幾つも......日本の老舗の強さの根源は同族経営にあり

Keeping It in the Family

2020年01月23日(木)15時30分
エミリー・タムキン

20世紀になると長子相続制は廃れたが、企業経営者が単独の後継者に会社を継がせるケースは依然として多い。ただし、同族経営を継続するために、成人を養子として迎え入れる方法に頼ることが往々にしてある。つまり、経営者がしかるべき人物と法的に養子縁組をして、事業の経営を任せ、のちに引き継がせる(こうした養子縁組は、あとを継ぐ予定の男性と経営者の娘を結婚させる場合もある)。

日本では、年間約8万人の養子縁組が成立しているが、その大半は成人だ。ある調査によれば、養子縁組した後継者が経営する企業は、「血縁関係にある」後継者が経営する企業よりも業績が良い傾向がある。また、養子縁組した後継者や血縁関係にある後継者が経営する企業は、同族経営ではない企業より高い業績を上げている。

長い歴史を持つ同族経営に、文字通りの新しい血を加えることで、日本の老舗企業は進化を続けてきた。これは「論より証拠」で、日本最古とされる企業の大半は同族経営だ。ワインスタインがその代表例として挙げるのが住友と三井だ。どちらも明治時代に創業され、やがて合併して、日本第二の規模を誇る多国籍企業「三井住友銀行(SMBC)」が誕生した。

社名と同様に理念も引き継ぐ

世界で最もよく知られている日本の同族企業は「任天堂」かもしれない。同社は1889年(明治22年)に花札やトランプの製造販売を始め、やがてゲーム機を製造する日本の代表的企業へと変貌を遂げた。その間、長きに渡って同族経営が続いていた。

オックスフォード大学院のヒュー・ウィテカー教授(日本経済・ビジネス専門)によると、同族経営は、事業継承と革新の絶妙なバランスの上に成り立っている。老舗企業は何世紀にも渡ってこの2つのバランスをうまく取りながら歩んできた。

「日本のビジネスの基本理念は、献身であって選択ではない」とウィテカーは指摘し、経営者は現状よりも伝統を重視する、と強調する。

別の言い方をすれば、四半期毎の報告書にこだわらないのが日本の企業文化だ。「同族企業は常に、(他の事業形態より)強靭さを見せるだろう」とワインスタインは述べる。「同族企業は、社名を引き継ぐのと同様にその理念も引き継ぐからだ」

©2019 The Slate Group

(翻訳:ガリレオ)

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円ちょうど付近、日銀利上げで

ワールド

26年ブラジル大統領選、ルラ氏が右派候補に勝利との

ワールド

バングラで暴動、撃たれた学生デモ指導者死亡受け 選

ワールド

サウジ原油輸出、10月は2年半ぶり高水準 生産量も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中