最新記事
シリーズ日本再発見

日本各地のマラソン大会が「外国人ランナー歓迎」の理由

2018年04月27日(金)11時50分
井上 拓

Photo:富士山マラソン

<インバウンドの波は、マラソンイベントにも押し寄せている。モノ消費からコト(体験)消費へ。外国人ランナーの需要を喚起する「スポーツ×観光=スポーツツーリズム」の潮流は、日本の地域経済活性化の切り札となるか>

2007年2月の東京マラソン開催をきっかけに、日本は空前のランニングブームを迎えた。この10年でマラソンの競技者人口が爆発的に増え、市民ランナーの裾野が広がったことは、誰もが皮膚感覚で感じている大きな変化だろう。

日本最大級のランニングポータルサイト「RUNNET」を運営するアールビーズの調査によると、日本陸上競技連盟公認コース(準拠を含む)を使用したフルマラソンの対象大会数は、2006年度の50から2016年度の79にまで増加。これに比例して、対象大会の完走人数も10万3590人から36万4546人(同一人物が複数回完走した場合は、ベストタイムのみを採用して集計)へと右肩上がりに推移している。

フルマラソンの大型大会だけではない。市民ランイベントを含めた大会の開催数は全体的に増え続けており、現状把握できるだけでも全国に2800以上(アールビーズ調べ)あるという。

その一方で、年1回以上ランニング・ジョギングをするランナー人口の推計は、2012年の1009万人をピークに2016年には893万人となり、減少傾向だという調査報告(笹川スポーツ財団調べ)もある。

走り始めてはみたけれど、今はまったく走っていない......身近なところで心当たりがある人も多いのではないだろうか。

過熱したランニングブームが落ち着き、継続率の高いアクティブ層が定着。スポーツマーケティングの研究者である早稲田大学の原田宗彦教授によると、「国内マラソン市場のライフサイクルは、東京マラソンの開始を導入期とすれば、成長期を経て、まさに成熟期に入ってきている」。

そんな成熟期にある日本で今、盛り上がりを見せつつある新しいランナー層がある。外国人ランナーだ。

いま刮目すべき、新しいランナーチャネル

前述の「RUNNET」でも近年の世界的なランニング需要の増加に伴い「RUNNET GLOBAL」(前身「RUNNET JAPAN」)という英語対応サービスを2015年から開始している。

アウトバウンド向けの海外大会はもとより、インバウンド向けの国内の登録大会数も増えており、サービス利用者数とともに、2017年の実績で、前年比2倍以上も伸びているという。

またアールビーズスポーツ財団が2017年の第6回大会から主催側として企画・運営に関わる「富士山マラソン」では、42カ国から1543人もの外国人ランナーが参加。富士山及び河口湖周辺は、そもそも訪日観光客の間でとても人気の高いエリアだが、紅葉が見頃の11月開催とはいえ、1万人規模の大会で全参加者数の16%がインバウンドという構成比の高さには驚かされる。

国籍別の内訳を調べてみると、台湾490人を筆頭に、香港342人、タイ224人、中国211人、アメリカ48人......と続き、主にアジア圏のランナーを中心に人気の高さを窺い知ることができる。

成熟期に突入した日本のマラソン市場の中で、目立ち始めたインバウンドランナーの存在感。その背景にあるものとは、一体なんなのだろうか?

japan180427-2.jpg

Photo:富士山マラソン

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トルコ中銀、1%利下げ インフレ警戒で緩和ペース減

ワールド

米、アルゼンチン産牛肉の輸入枠を4倍に拡大へ 畜産

ビジネス

米関税、英成長を圧迫 インフレも下押し=英中銀ディ

ビジネス

米9月中古住宅販売、1.5%増の406万戸 7カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中