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シリーズ日本再発見

仏壇・お墓から「機械式納骨堂」へ!? 日本の供養が変わる

2017年07月29日(土)17時57分
熊谷祐司

mykeyruna-iStock.

<日本独自に進化を遂げた仏壇も、祖先供養に欠かせないお墓も、いま曲がり角に来ている。そこで注目を集めているのが、まるでコインロッカーや立体駐車場のような納骨堂だ>

祖先供養のかたちとして、日本独自の進化を遂げたのが家庭用の仏壇だ。仏教発祥の地のインドはもちろん、仏教国として知られるタイにも、日本のような仏壇はない。

他の主な宗教も同様だ。キリスト教には成仏や供養という概念はなく、仏壇のような個人用の祭壇スペースに、位牌を置いて祀ることは基本的にない。偶像崇拝が禁じられているイスラム教は、言うまでもないだろう。

そんな日本の仏壇も、住宅事情の変化などを主な背景として、保有率の低下が進んでいる。戸建てに比べて床面積が制限されがちなマンション世帯の増加で、仏壇用の部屋やスペースを確保できないケース。あるいは核家族や単身世帯など、同居する家族構成が小規模化しているため、場所の問題だけでなくそもそも仏壇を置く意味を見いだせないケースもある。

経済産業省の商業統計によれば、仏壇や宗教用具の市場規模はこの20年で半減した。

東京・港区の寺院を運営する住職は、匿名を条件にこう現状を嘆く。「仏壇はいわばお寺の『支店』。お寺の墓参りへ足が遠のく人が増えているのと同様に、自宅での仏壇の存在感も小さいものとなってきている」

その住職によれば、「年1回はお参りに来ていた人が、2年間隔、3年間隔となり、ついには来なくなり音信も不通になる、そんなケースが珍しくなくなってきている」。

地方と都会それぞれの深刻な「お墓」問題

仏壇以上に深刻なのが、お墓の問題だ。

仏壇の所有や配置はあくまで私有財産の問題だが、お墓の場合はお寺や霊園の敷地を借りる形態のため、ある日突然「止めます!」「引っ越します!」というわけにはいかないからだ。

簡単にはなくせないからといって安泰とはならず、少子高齢化、そして都心部への人口集中により、特に地方では「荒れ墓」が目立つようになってきた。誰もお参りすることなく、風雨にさらされ朽ちる一方の、荒れるに任せた墓のことである。

一方、人口過密状態にある都心部も問題を抱えている。お墓用の土地が足りないのだ。

最も顕著な東京都を例に挙げてみよう。全日本墓園協会の調査によれば、東京都の墓地需要数が2010~2015年は約1万5000基だったのに対し、2015~2020年は約1万8000基、2020~2025年は2万基以上が必要になる。

その後も2060年まで需要は漸増の予測が続く。一定の面積に区切られた区画に墓石を置き、遺骨を納めて節目節目にお参りするスタイルに限界が来ているとも言える。

【参考記事】夏に初詣も!? 御朱印ブームだけじゃない神社界の新潮流

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