最新記事
シリーズ日本再発見

夏場は6時間待ちも! 日本で今「かき氷」がブームの理由

2017年05月31日(水)13時30分
廣川淳哉

「かき氷を通して和菓子に触れてもらいたい」

同店でメニュー開発を手がけるのが、10年前から喫茶担当として働く江良保正さん。「女将さんと相談しながら、ちょっとずつメニュー開発を進めてきました。今では、年間30~40種類を出すようにしています」と江良さん。氷にそら豆を濾した餡をかけた「そら豆ずんだ」など、あくまでも和菓子の範疇で、かき氷の新たな味わいを模索し続けている。

japan170531-6.jpg

東京・目白にある「志むら」の「そら豆ずんだ」は850円。「宇治金時」などの定番もあり、シロップにいちごの果肉が入った「生いちご」も人気。どれも、プラス100円で南アルプスにある八義の天然氷を選べる Photo:廣川淳哉

japan170531-7.jpg

1939年創業の志むらの1階は、和菓子を販売する店舗スペース。看板商品は「九十九餅」。オリジナルシロップを使用したかき氷は、2階、3階の喫茶スペースで食べられる Photo:廣川淳哉

氷に添えた白玉は、看板商品の和菓子「九十九餅」と同じ白玉粉を使ったもの。「かき氷を通して、若い人にも和菓子に触れてもらいたい」と語る老舗店の和菓子職人もまた、かき氷ブームの立役者のひとりだ。

昨今のかき氷ブームについて尋ねると「間違いないのは、写真を撮って、ネットに上げたくなる見た目。うちは盛り方が特徴的で、通称、ガケ盛りと呼ばれています」。

志むらの「そら豆ずんだ」や「生いちご」などに見られるガケ盛りは、重量があるシロップを氷にかけると氷が沈んでしまうことから生まれた、独自の盛り付け方。ついレンズを向けたくなる、大胆なビジュアルだ。

【参考記事】日本独自のコーヒー文化は、喫茶店と缶コーヒーだけじゃない

日本かき氷協会の小池代表が「氷にかけるシロップはもはや、ソースと呼んだほうがしっくりくる」と語るように、SNSとの相性が抜群によく、かき氷を年中食べられるスイーツへと押し上げた濃厚なシロップこそが、近年のかき氷ブームの火付け役だ。

はたして、かんなの「あずきマスカルポーネ」や、志むらの「そら豆ずんだ」にかけられたオリジナルシロップはどんな味がするだろうか? その味わいを確かめる術は、行列覚悟で店を訪れる以外にない。

japan_banner500-season2.jpg

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中