コラム

「メイド・イン・オキュパイド・ジャパン」って?

2013年06月29日(土)16時10分

海を渡ったオキュパイド・ジャパン」という、ちょっと興味深い展覧会が開かれている(於:六本木ヒルズ森タワー49階/アカデミーヒルズ入口の展示スペース)。

 オキュパイド・ジャパン(Occupied Japan)とは、第2次大戦後の「占領下日本」のこと。民間貿易が再開された1947年から、サンフランシスコ講和条約が発効した52年まで、日本からの輸出品には「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の刻印を付けるようGHQ(連合国最高司令官総司令部)から命じられていた。

 北米を中心に輸出された品々は、陶器やおもちゃ、布製品、カメラなどさまざま。「OCCUPIED JAPAN」の文字が付いた5年間だけの期間限定アイテム(「OJ」と呼ばれる)は希少価値を持ち、コレクターたちによる収集の対象になっている。


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 今回の展覧会はカリフォルニア州在住のコレクター、田中荘子さんの収集品1万点の中から代表的なものが選ばれている。浅学の私は今回の展覧会について知人から聞いて、初めて「OJ」を知った。展示ケースに並んでいるのは手作り感あふれ、愛らしい品ばかりで、特に陶器やおもちゃはとても温かみを感じる。


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 多くの人が食べる物にも困るような時代でも、戦時統制が解けて、綺麗なもの、華美なもの、欧米風のものと、なんでも自由に作れることに作り手たちは喜びを感じていたと思う。日本の外貨獲得にも貢献したし、輸出拡大とともに経済成長していく足掛かりにもなったことだろう。

 アメリカのコレクターの全国組織「OJクラブ」の会長も務める田中さんは、「戦後の日本人が苦しい生活の中でもこんなに素敵な品々を作っていたことを、今の人たちに知ってもらいたい」と話す。来年は陶器で有名な愛知県・名古屋や瀬戸、岐阜県・美濃での巡回展も予定しているそうだ。

 7月21日まで開催しているので(無料)、興味のある方は足を運んでみてほしい。

――編集部・大橋希


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