コラム

南アW杯公式ダンスを踊ってみた!

2010年05月29日(土)10時00分

 行きたい、行きたい、南アフリカW杯に行きた~い、と叫んだところで行けるわけでもない。ボスに長期休暇願いを切り出す度胸もないし、何しろ地球を半周するだけのおカネが......。

 熱烈なサッカーファンというわけでもない。ピークは「ドーハの悲劇」だった。夜中にテレビの前で「え?! 何で? 何で? 何で? ウソや~~」と絶叫し、ラモスと一緒にうなだれて、私のサッカー熱は終わった。

 でも、やっぱり4年に1度のお祭り、騒がなきゃ損だ。しかも今回はW杯史上初のアフリカ開催。これまでとは一味も二味も違う大会になりそうな予感がする。
 
 というわけで、現地に行けなくても何か南アな気分になれるものはないかと探してみたら......あった。南アW杯公式ダンス、Diski(ディスキ)。

 低予算で作った素朴なミュージックビデオみたいでほっこりする。出てくる子供もキュート。ちょっとパンチもないしセクシーなムーブもないけど、そこはご愛嬌。だってこのDiski、別に南アの伝統的なサッカー応援ダンスというわけではなく、南アフリカ観光局、つまり「お役所」がW杯を盛り上げるためにわざわざ作ったダンス。南ア観光局のサイトによれば、リズミカルで派手な南アのサッカースタイルを表現したのだという。丁寧に指導ビデオもアップしてあるので、いざ挑戦。

Diski Dance demonstration from BIG Media on Vimeo.

 部屋でパソコンの前に立ち、サッカー踊りをする姿はなんともマヌケだったに違いない。でも3回ぐらいやったら何だか妙な達成感。複雑な動きはないし、サッカー経験者なら、きっとキレのある足さばきで胸や腰の入れ方も自然にキマるはずだ。

 レクチャー終盤になると息切れし出すインストラクターのおっちゃんも面白い。彼の指導をざっくり意訳すると、「要は、南アのリズムを感じればそれでよし! ただし仮想のボールからは絶対に目を離すな。とくに胸トラップとリフティング・ステップのときは視線が勝負だ!」 

 南ア観光局は国内外にDiskiダンサーを派遣して指導・普及に努めている。これは南ア政府の「国家イメージアップ大作戦」の一環だ。他には、国旗をたくさん購入して国歌を覚えよう、大会期間中は街で困っている外国人を見かけたら助けてあげよう、など。貧困と犯罪、人種の分断に見舞われた国じゃなく、フレンドリーで愛国心にあふれ結束力のある国として世界にアピールするのが狙いだ。

 でも地元のオンラインニュース「メイル&ガーディアン」は、こうした取り組みをけっこう冷静に見ている:

押し寄せる外国ジャーナリストたちが欲しいのは、観光客と地元住民がDiskiを踊る写真ではない。彼らが狙う一枚は、新築された豪華スタジアムを背景に、スラムで黒人の子供がぼろぼろのサッカーボールで遊ぶショットだ。強盗に暴行され身ぐるみはがされた観光客のネタだ。

 ごもっとも。さすが同業者、報道人間のいやらしさをよく分かっていらっしゃる。
それでも、W杯南ア大会組織委員会のスポークスマン、リッチ・ムコンドはすべてを見越した上でこう言っている。「週に1本でも前向きなストーリーを提供できれば、この国の見方を変えることができるだろう」

 そんなちょっと上から強いられた感のあるDiskiが、はたしてどれぐらい浸透しているのか。正直分からない。やはり現地の雰囲気を肌で感じられないのは悔しい。

 一方、確実に浸透していると断言できる応援グッズがある。南アサポーターの必須アイテム、ごう音ラッパ「ブブゼラ」と、ド派手ヘルメット「マカラパ」だ。

 ブブゼラは長さ1mほどのプラスチック製ホルン。その重低音はまるで蜂の大群が襲って来るような「騒音」で、対戦国から苦情が出るほど。起源はシカに似た動物クーズーの角で作ったホルンで、その昔、村人に集合をかけるときに使われていたという。

 マカラパは工事現場でよく見るヘルメットにカラフルな装飾をあしらったもの。デコレーションは、チームロゴにお気に入りの選手にマンデラ元大統領まで何でもあり。鉄則は、派手であること、のようだ。

 さて本番まであと2週間。先日は南アの国会議員たちがDiskiダンスの1日トレーニングを受けたという。ハーフタイムに、ズマ大統領はじめ政治家の皆さんが腰をフリフリする姿が見られるかもしれない。なんてお茶目な国なんでしょう。

 芝の上ではミラクルなプレーや余興(?)がたくさん飛び出ることを期待するけど、それ以外では大事が起きませんように。

──編集部・中村美鈴

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米オラクル、数千人の削減を計画 データセンター費用

ワールド

米大統領次席補佐官、麻薬組織は「軍事力でのみ打倒可

ワールド

米長官、対イラン「目標拡大せず」 指導者巡るトラン

ワールド

NATO、ミサイル防衛態勢を強化 トルコの迎撃受け
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリングが新作『ピリオン』で見せた「別人級」の変身
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 6
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 7
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 9
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story