コラム

キルギス非常事態、歴史は繰り返す

2010年04月08日(木)12時06分

中央アジアのキルギスで7日に起きた反政府暴動。野党勢力は政府庁舎や国営テレビを占拠し、「臨時政府」を樹立すると宣言、大混乱になっている。

キルギスには米軍、ロシア軍、両方の軍事基地があり、アメリカのアフガニスタンでの対テロ戦争で後方支援の拠点である重要な国だ(アフガニスタンからのヘロインの密輸ルートでもある)。アメリカ、ロシア、国境を接する中国の間で、地政学的な重要拠点として、その動向はずっと注目されてきた。

ただその不安定ぶりはこれまでもちょくちょくメディアでも報道されてきた。政権が崩壊するのも時間の問題だったようだ。

クルマンベク・バキエフ大統領(05年のキルギスの政変で就任)は米露の軍事基地を利用するししたたかさを持っていた。もともと中央アジアに米軍基地が存在することを快く思っていなかったロシアと中国から、米軍基地を封鎖するよう圧力をかけられてきた。そして09年にロシアから多額の援助を受け、米軍が十分に基地使用料を支払っていないとして、米軍基地の封鎖を議会の賛成多数で決定。米軍は基地使用料など多額の資金援助をキルギスに行なっていたが、ロシアはそれを上回る支援を約束した。結局、どうしても手放せないアメリカは、使用料を増額して基地使用を取り付けた(それまでの3倍の額で年間6000万ドル)。結局バキエフが米露を手玉に取った形になった。

バキエフ大統領は国内でも、ますます独裁主義的になっていると批判されてきた。07年には憲法改正をして、反対勢力が政治舞台に上がることを禁止するなど、自らの権力を拡大。首都ビシュケクを皮切りに、国内で公共のデモを禁止し、反政府勢力の大物がトルコのビジネスマンを殺したとして不法逮捕されたり(陰謀だと指摘されている)、政府に批判的なジャーナリストへの暴行、政治活動からNGOを締め出す法案を審議したりと、バキエフはやりたい放題だった。

また弟を国内の公安機関の中心になるポスト、国家警護庁長官に任命し、バキエフ兄弟は国家の重要人物の行動などのすべてを掌握することになったと指摘された。弟は国家保安庁の諜報局員の第1次官だった06年、野党議員の鞄にヘロインを忍び込ませる工作を行い辞職した経験を持つ。

アスカル・アカエフ元大統領も強権支配が原因で大統領の座を追われた。だがアカエフ時代よりも、バキエフ政権の方が独裁的で、汚職も蔓延していると非難されてきた。

歴史は繰り返す、というところか。

――編集部・山田敏弘

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、12月は4.1万人増 予想下回る

ビジネス

米国やG7と連携、冷静・毅然に対応=中国輸出規制で

ビジネス

PEのクアンタム、ルクオイル海外資産に入札 シェブ

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、12月2%に減速 ECB目標と
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじゃいる」──トランプの介入口実にデンマーク反発
  • 4
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 5
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 6
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story