最新記事

ベラルーシ

ベラルーシの「ハイジャック」を盟友ロシアが擁護「完全に妥当」

Russia Calls Belarus' Diversion of Passenger Plane Carrying Blogger 'Absolutely Reasonable Approach'

2021年5月25日(火)18時39分
キャサリン・ファン
ロシアのラブロフ外相

コワモテのルカシェンコにはコワモテの後ろ盾が(写真はロシアのラブロフ外相) Yuri Kochetkov/REUTERS

<自分の政敵を拘束するために民間航空機をハイジャックしたベラルーシのルカシェンコの後ろ盾は、独裁者仲間のあの人>

ベラルーシ当局は5月23日、領空を飛行中だった旅客機を緊急着陸させ、乗っていた反体制派ジャーナリストのロマン・プロタセビッチを拘束した。国際社会からは一斉に非難の声があがっているが、隣国のロシアは異なる見解を示した。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は24日の会見で、「(緊急着陸させたことは)完全に妥当だと考える」と述べた。「ベラルーシ外務省はこの措置について、透明性を確保し、あらゆる国際法に従う用意があると強調した」

5月23日、ギリシャからリトアニアに向かって飛行中だったライアンエアー旅客機は、ベラルーシのミグ29戦闘機に先導され、ベラルーシの首都ミンスクに強制着陸させられた。

透明性のある説明とは

ベラルーシ大統領官邸の発表によると、この旅客機に爆弾が仕掛けられた可能性があるという情報を得て、ウラジーミル・プーチン露大統領の長年の盟友で「ヨーロッパの最後の独裁者」と呼ばれるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領自らが着陸を命じたという。ベラルーシ国営メディアは、旅客機を強制着陸させる以外当局に選択肢はなく、着陸後はプロタセビッチを逮捕するしかなかったと報じている。

拘束後、自白を強要されたとみられるプロタセビッチ。起訴されれば死刑もありうる


同国警察によると、機内で爆発物は発見されなかった。

プロタセビッチは、情報やニュースを共有できる暗号化メッセージアプリ「テレグラム」上で運営されている反体制派メディアチャンネル「ネクスタ(NEXTA)」の共同創業者で元編集者。ネクスタは、反ルカシェンコ政権を訴える抗議デモを組織する手段として広く知られている。プロタセビッチはポーランド在住で、事件があった時はベラルーシを飛び越えてリトアニアに向かう途中だった。

ベラルーシ国営テレビは、プロタセビッチが乗っていることを当局は知らずに着陸を命じたとしている。

ラブロフの会見前、ロシア下院議員レオニード・カラシニコフは、ベラルーシには、国の安全を脅かす脅威に対処するため「適切かつ必要だと考える方法」を選ぶ権利があると述べた。

ロシア国有通信社RIAノーボスチによれば、カラシニコフは「ベラルーシは独立国家だ。安全が脅かされていると判断したのなら、その脅威と戦わなくてはならない」と述べたという。

ラブロフは国際社会に対して、「事態を冷静に判断するよう」呼びかけたが、アメリカ、イギリス、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、国連は一致してルカシェンコの行為を非難し、国際調査の実施とプロタセビッチの解放を求めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国万科の元建て社債が過去最安値、売買停止に

ワールド

鳥インフルのパンデミック、コロナ禍より深刻な可能性

ワールド

印マヒンドラ&マヒンドラ、新型電動SUV発売 

ワールド

OPECプラス、第1四半期の生産量維持へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中