最新記事

民間航空

民間航空機の強制着陸はハイジャックと同じ、ベラルーシの「国家テロ」に欧米猛反発

Belarus Slammed for 'Reprehensible' Forced Landing of Lithuania-Bound Ryanair Flight Carrying Activist

2021年5月24日(月)17時15分
ジェイソン・レモン
「欧州最後の独裁者」ことベラルーシのルカシェンコ大統領

「欧州最後の独裁者」ことベラルーシのルカシェンコ大統領(昨年9月、首都ミンスクで)Tut.By-REUTERS

<それも乗客だった反体制派ジャーナリスト一人を拘束するため、という身勝手さ。欧米諸国からは非難の嵐、厳しい対応の可能性も>

リトアニアに向けてベラルーシ上空を通過していた民間旅客機が23日、ベラルーシ当局によって強制着陸させられ、反体制派活動家の乗客が逮捕された問題を巡り、国際社会から非難の声が上がっている。

ギリシャのアテネ発、リトアニアのビリニュス行きのライアンエア機に乗っていて、ベラルーシ当局に身柄を拘束されたのはジャーナリストのロマン・プロタセビッチ(26)。暗号化メッセージアプリ「テレグラム」内のチャンネル「NEXTA」の運営に関わっていた人物だ。ベラルーシでは昨年8月の大統領選でアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が6度目の当選を決めたが、これに対し不正があったとして大規模な抗議運動が発生。デモなどの状況を報じたことで知られるのがNEXTAだ。

プロタセビッチは現在、リトアニアを活動拠点に、テレグラムの別のチャンネルの運営に関わっている。

ライアンエア機の強制着陸を受けてアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は23日、「ルカシェンコ政権が犯したこの衝撃的な行為により、アメリカ国民を含む120人を超える乗客の生命が危険にさらされた」と非難するとともに、プロタセビッチの釈放を求める声明を出した。

また、ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は、強制着陸は「ハイジャック」であり「言語道断な国家テロ行為」だと述べた。

嘘の「安全上の脅威」で着陸を指示

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長も「まったく容認できない」とベラルーシを非難した。

フォンデアライエンはツイッターで「すべての乗客が即時にビリニュスへの旅を続行できなければならないし、身の安全も保障されなければならない。いかなる形であれ国際空運のルールを破れば、責任を取らなければならない」と述べた。

問題のライアンエア機はベラルーシ上空を通過してリトアニアに入るところだった。ロイター通信によれば、ベラルーシ当局は「安全上の脅威の可能性」について警告してきたという。そこで同機は方向を変えてミンスクに着陸。すべての乗客は降ろされ、プロタセビッチは「過激主義」と大規模な暴動を扇動した容疑で逮捕された。

「EU内のライアンエア機のフライトがミンスクに向けて方向転換させられた件について、そしてジャーナリストが逮捕されたとされる件について、われわれは即時の説明をベラルーシ政府に求めなければならない」と、ドイツのミゲル・ベルガー外務次官はツイッターで述べた。

イギリスのドミニク・ラーブ外相はツイッターで「憂慮」の念を示すとともに、「われわれは同盟国と連携している。ルカシェンコによるこの奇異な行為は、重大な結果をもたらすだろう」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き トランプ氏任命の

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中