コラム

増える難民を援助と引き換えにアフリカの第三国に「転送」──イギリスが支払うコストはいくらか

2024年05月09日(木)14時10分

イギリスにとっての見えないコスト

それは同時に、大陸で影響力を強める中国やロシアに対する牽制にもなる。ルワンダは中ロとも良好な関係にあり、とりわけ中国は最大のビジネスパートナーだ。それは欧米への牽制になるが、欧米との強い関係がなければ逆に中ロに呑み込まれかねない。

これらを考えれば、ルワンダ政府にとって多少無理をしてでも “転送” に合意することは、資金援助以上の価値があるともいえる。

その裏返しで、イギリスにとってのコストは一人3000万円では済まない。

難民申請者を実際にルワンダに “転送” する費用を考えれば、イギリス政府が実行に踏み切るか、あるいは踏み切ったとしてもどの程度の規模になるかは不透明だ。

しかし、「厄介払い」のためにイギリス政府が白を黒と言いくるめるような主張を展開してきた事実は消えない。それはイギリスのいう自由や人権に対する信頼を損ねるもので、ガザ侵攻への対応などをめぐって高まる「ダブルスタンダード」批判を加速させかねない。

そちらのコストの方が長期的にはむしろ大きいとさえいえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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