コラム

30万人を戦場に送り出せる「部分的動員」──プーチンを決断させた3つの理由

2022年09月27日(火)11時40分

ただし、ロシア国内では戦争に反対する声がある一方、保守派を中心に、総動員を求める強硬意見すらある。こうした立場からは、動員を否定するプーチン政権の方針が「生ぬるい」とみなされてきた。

例えば、共産党党首ゲンナジー・ジュガーノフは大統領選挙に立候補した経験もあり、プーチンのライバルではあるが、ウクライナ侵攻に関しては全面的に賛成しており、むしろ「総動員を発令すべき」と主張している。

もともとプーチン政権は強い国家や伝統的価値観などを強調し、ナショナリズムを鼓舞することで支持基盤を固めてきた。そのプーチン政権にとって、ウクライナ東部で占領地が奪還されるなど戦局が思わしくないなか、これ以上動員を躊躇すれば、ナショナリストからの支持をも損なうことにもなりかねない。

かといって、総動員はコアな支持者や熱狂的なナショナリスト以外からの拒絶反応が強すぎる。予備役に限った部分的動員の発令は、こうしたジレンマのなかでの決定だったといえる。

いわばナショナリズムを鼓舞して支持基盤を拡張したプーチンは、逆にナショナリズムに絡め取られているといえるだろう。

そのため、ウクライナ東部を諦めないロシアの方針は、もはやプーチンの意図にかかわらず、これまで以上に強固になるとみてよい。ウクライナ侵攻はしばしば「プーチンの戦争」と呼ばれてきたが、たとえプーチンがいなくなったとしても、それですぐ終結するとはいえないのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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