コラム

欧米諸国が「ロシアの選挙干渉」を嫌う理由──最初に始めたのはこっちだから

2018年02月01日(木)18時30分
欧米諸国が「ロシアの選挙干渉」を嫌う理由──最初に始めたのはこっちだから

APEC首脳会合で言葉を交わすプーチンとトランプ(2017年11月11日) Kremlin/REUTERS

一般的に、外国による国内政治への干渉は「あってはならないこと」です。しかし、タテマエと実態が一致しないことは、世の中の常です。

欧米諸国では、2016年米国大統領選挙などにおける「ロシアの選挙干渉」に関する疑惑が深まっています。ところが、これまで他国の選挙や政治に深くかかわってきたのは、他ならない欧米諸国です。これまで欧米諸国が欧米以外で行ってきたことを、欧米以外の国によって欧米でされたからこそ、欧米諸国は「ロシアの選挙干渉」に神経質であるといえます

疑惑の余波

1月29日、FBIのマケイブ副長官が退任。2016年米国大統領選挙に先立ってトランプ陣営とロシア政府が接触をもっていたという疑惑を受け、フリン補佐官やコーミーFBI長官の辞任・退任が相次ぐなか、マケイブ副長官の退任はトランプ政権からの事実上の圧力によるもので、「ロシアの選挙干渉」疑惑はさらに深みにはまっていく様相を呈しています。

選挙に関する疑惑をトランプ大統領もロシア政府も否定していますが、「ロシアの選挙干渉」の疑惑は米国だけにとどまりません。

欧米諸国の間では「ロシアによる選挙への干渉」の疑念が広がっており、2017年9月のドイツ連邦議会選挙や、10月のスペイン、カタルーニャの分離独立をめぐる住民投票でも、SNSなどを通じたロシア政府による宣伝工作などが指摘されています。

欧米諸国の内政干渉

とはいえ、仮にロシア政府が自国にとって都合のよい政権が成立するように、あるいは自国に都合の悪い候補が落選するように工作しているとしても、他国の政治や選挙に干渉することはロシアの専売特許ではありません。むしろ、欧米諸国とりわけ米国は、特に東西冷戦が終結した1989年以降、それを露骨に行ってきたといえます。

冷戦終結は、欧米諸国にとって「共産主義に対する自由と民主主義の勝利」でもありました。ところが、「自由と民主主義」がいわゆるグローバルスタンダードとなり、その中心に欧米諸国が位置したことは、「民主化支援」や「選挙のアドバイス」といった名目で欧米諸国が非欧米諸国の政治や選挙にかかわることをも正当化しました

米英仏など主な欧米諸国は、それぞれ援助の前提条件として民主化や人権保護を求め始め、その結果、例えば援助への依存度が高いアフリカ各国では、1990年代の前半に一党制や軍政が相次いで体制を転換。選挙を行っていた国は1989年には8ヵ国に過ぎませんでしたが、1995年には35ヵ国に急増しています。

ハゲタカは誰か

欧米諸国による民主化圧力が「自由と民主主義の普及」という高尚な目的に支えられていたことは疑えません。また、それが結果的に世界各国の民主化を促したことも確かです。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

ニュース速報

ビジネス

三菱自、希望退職500—600人規模募集へ 管理職

ワールド

焦点:ギンズバーグ判事の死、米社会の「右旋回」に現

ビジネス

米ハイテク株主導で続伸、ダウ週間で4週連続値下がり

ビジネス

ドル上昇、週間では4月上旬以来の大幅な値上がり=N

MAGAZINE

特集:コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50

2020-9・29号(9/23発売)

新型コロナで企業フィランソロピーが本格化──利益も上げ、世界を救うグッドカンパニー50社を紹介

人気ランキング

  • 1

    中国軍の侵攻で台湾軍は崩壊する──見せ掛けの強硬姿勢と内部腐敗の実態

  • 2

    核武装しても不安......金正恩が日本の「敵基地攻撃能力」を恐れる本当の理由

  • 3

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに動画が拡散

  • 4

    中国の台湾侵攻に備える米軍の「台湾駐屯」は賢明か 

  • 5

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮…

  • 6

    ロックダウンに耐え忍んだ末のイギリスの規制強化は…

  • 7

    美貌の女性解説員を破滅させた、金正恩「拷問部隊」…

  • 8

    インドネシア、コロナ死者1万人突破 政府は打つ手な…

  • 9

    新型コロナ感染で、パーキンソン病のリスクが高まる…

  • 10

    韓国の新法相、秋美愛氏にも不正疑惑で、文在寅不信…

  • 1

    安倍首相の辞任で分かった、人間に優しくない国ニッポン

  • 2

    中国人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開

  • 3

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに動画が拡散

  • 4

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮…

  • 5

    権威なき少数民族にはここまで残酷になれる、中国の…

  • 6

    中国軍の侵攻で台湾軍は崩壊する──見せ掛けの強硬姿…

  • 7

    どこが人権国家? オーストラリア政府がコロナ禍で…

  • 8

    美貌の女性解説員を破滅させた、金正恩「拷問部隊」…

  • 9

    2020年ドイツ人が最も恐れるのは......コロナではな…

  • 10

    なぜ日本は「昭和」のままなのか 遅すぎた菅義偉首…

  • 1

    安倍首相の辞任で分かった、人間に優しくない国ニッポン

  • 2

    中国人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開

  • 3

    【動画】タランチュラが鳥を頭から食べる衝撃映像とメカニズム

  • 4

    反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船…

  • 5

    1件40円、すべて「自己責任」のメーター検針員をク…

  • 6

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに…

  • 7

    米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない

  • 8

    アラスカ漁船がロシア艦隊と鉢合わせ、米軍機がロシ…

  • 9

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮…

  • 10

    太陽の黒点のクローズアップ 最新高解像度画像が公…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!