コラム

円安を止めなければいけない理由は何か

2024年04月22日(月)16時45分

そもそも、通貨円が「逃避通貨」とされていたのは、かつてデフレや低インフレが長期間続きていた局面に、金融政策が機能不全に陥り、経済に下押しがかかると人々のデフレ期待が強まりそれが円高を招いていたためと筆者は考えている。であれば、金融政策がしっかり働いて、日本が米欧のように普通の国となりインフレ期待が高まっているのだから、ドルと異なり基軸通貨ではない円が根拠不明な「逃避通貨」にはならない。

 

インフレ定着を決定的にする効果は明らか

更にいえば、日本がデフレから完全脱却しつつあるのだから、円安そのものはポジティブに位置付けられることができる。円安が長引き、企業、家計のデフレマインドを変えて、インフレ定着を決定的にする効果は明らかである。円が「安全資産」である方が良いと考える論者は従来のデフレに心地よさを覚えてしまい、日本でインフレが定着しつつある現状に嫌悪感を抱いているのかもしれない。


(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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