コラム

無様なのにキラキラ輝く『ばかのハコ船』は原石のよう

2020年10月06日(火)10時45分

ストーリーは書けない。書いても意味がない。明確な起承転結はないし山場もない(強いて言えばラスト近くでマンホールに落ちる)。でも映画だ。映画でしかありえない作品だ。その後も山下と向井は作品を量産し続けている。つまりヒットメーカーだ。撮影の近藤龍人も話題作を撮り続けている。3人の大阪芸大の同期生は、今の日本映画にとって欠かせない存在になった。

しかしよほどの映画ファンでないかぎり、この作品は見逃していると思う。ほとんど話題にならなかった。だから断言する。3人の原点がここにある。無様で単調で卑屈で不細工。そして何よりも恥ずかしい。でもキラキラ輝く原石のような映画だ。

magmori201005_Baka2.jpg『ばかのハコ船』(2002年)
監督/山下敦弘
出演/山本浩司、小寺智子、細江祐子、山本剛史

<本誌2020年8月11日/18日合併号掲載>

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プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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