コラム

昭和天皇の写真を焼き、その灰を踏みつける──『遠近を抱えた女』を直視したなら

2020年09月25日(金)10時45分

ついでに書けば、あいちトリエンナーレの問題が渦中の時期、大浦は「一部を切り取って批判された」ことに対して異議を唱えていた。それは全く正論。あの頃、多くのメディアは、一部どころか作品をしっかりと観ないままに批判していた。大浦が提起する自分の内面と天皇制の問題も、僕は全く共感する。だからこそ大浦に言いたかった。作品の一部を自ら切り取って提示すべきではない。誤読されて当たり前だ。

有料配信で公開された『遠近を抱えた女』を観て驚いた。娯楽性が非常に強い。映画としての完成度も高い。焼くという行為は「侮蔑」か「昇華」か。その判断は観た側に委ねられる。本来は劇場公開を予定していたのに、この時期に重なったことは不運だ。でもネットで観られる。特に「あれだけは絶対に許せない」と思った人に観てほしい。もちろん「記憶・イメージ」はあなたのもの。その規定など誰にもできない。

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『遠近を抱えた女』(2019年)
©HiCROSS Cinematography
監督/大浦信行
出演/あべあゆみ、双鬼

<本誌2020年6月16日号掲載>

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森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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