コラム

消費税ポイント還元の公式アプリが「使えない」理由

2019年10月16日(水)21時14分

しかも、参加する店の数は今後さらに増え、経済産業省によると10月21日には61万店になる見込みだという。さらに、キャッシュレス決済手段の普及も続くだろうから、各店舗で使えるクレジットカードの種類やQRコード決済の種類がこれからも増えていくはずである。加盟店舗数が増える一方で、決済手段も増え、かつ平等院鳳凰堂の真ん中にガソリンスタンドがあると指摘されたらそれも直していかなければならないとしたら、今後の作業はますます膨大なものとなり、このまま数々の不具合を抱えたままポイント還元制度が終わる来年6月を迎えるということになりかねない。

そもそもいったいこのアプリを作った人々はいったいこれをどう役立ててもらいたいと思っているのか、その意図が不明である。私たちは、もともと商品が一物一価ではなく、同じ清涼飲料水でもスーパーとコンビニとでは価格がけっこう違うことを知っている。たとえばスーパーではポイント還元がなく、コンビニでは2%還元されるとしても、もともとの値段がスーパーの方が10円安ければやはりスーパーで買ったほうがお得ということになる。つまり、各店舗の還元率だけを知らされても、どこで物を買うかという意思決定にはあまり参考にならない。

参加店に3つのタイプ

それよりも、いつも買い物をしているお店で現金の代わりにクレジットカードやPayPayで払えば5%還元されるというのであれば、その情報は得ておきたい。とすれば、ポイント還元のある店の店頭にポスターやステッカーを貼っておいてほしいし、私にとってはそれだけの情報で十分である。

ということで、ポイント還元アプリを私もダウンロードしてみたものの、たぶんこの先二度と使わないと思う。もっともアプリを使ってみたことで、街を歩いていて受ける印象よりも、ポイント還元制度に参加している店が意外に多いことを知ったという意味では勉強になった。このアプリをみながら街歩きをしたら、参加店に3つのタイプあることがわかった。

第一は、ポイント還元をやっていることを店外に向けてポスターで表示していて、なかには店頭に「5%ポイント還元」というのぼりまで立てている飲食店や小売店。これを機に新たなお客さんをつかもうという熱意がある。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、金利の選択肢をオープンに=仏中銀総裁

ワールド

ロシア、東部2都市でウクライナ軍包囲と主張 降伏呼

ビジネス

「ウゴービ」のノボノルディスク、通期予想を再び下方

ビジネス

英サービスPMI、10月改定値は52.3 インフレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story