コラム

世界で最も自動運転車の社会実装を進めている会社は、意外な中国企業

2019年05月08日(水)19時05分

そして2017年4月、「中国AIの王者」として培ったAI技術、検索サービスから蓄積したビッグデータ、高精度3次元地図の知見、センシングなど自動運転の技術を結集し、満を持して自動運転プラットフォーム「アポロ計画」を打ち出したのです。

アポロ計画では、バイドゥが持つAI技術やビッグデータ、自動運転技術をパートナーにオープンにし、相互に共有することによって、パートナーが短期間で独自の自動運転システムを構築することを可能にする「AI×自動運転」技術のプラットフォームが提供されます。より多くのパートナーを巻き込むことによって、バイドゥの「アポロ」を自動運転車の世界のプラットフォームやエコシステムにすることを目論んでいるのです。

バイドゥは、2017年4月の「アポロ計画」発表に続き、7月に「アポロ1.0」、9月に「アポロ1.5」として自動運転プラットフォームの技術を段階的にオープンソース化し、2018年には「アポロ2.0」として自動運転の技術をほぼすべてオープンソース化しました。2018年7月に発表された「アポロ3.0」では、低コストでの量産ソリューションや限定区画での運転シナリオへの対応がなされています。この時点で、「アポロ」の実装により単純な都市部道路では昼夜を問わない自動運転が可能なレベルに達したとされています。

m_tanaka190508baidu-2.jpgm_tanaka190508baidu-3.jpgm_tanaka190508baidu-4.jpgm_tanaka190508baidu-5.jpg

バイドゥは2018年より自動運転バスをすでに21カ所で社会実装している。自動運転については、「コンセプトカーの日本メーカー」「商業化を2018年末から始めた米国テクノロジー企業」「社会実装を2018年から始めた中国テクノロジー企業」というのが現在の状況。写真はCES2019でのバイドゥの発表(1~3枚目)と、筆者が北京で自動運転バスに乗車した際のもの(4枚目)。いずれも筆者撮影

自動運転バスを2018年から社会実装化

CES2019においてバイドゥは、「世界でもっとも自動運転車の社会実装が進んでいる会社」として注目を集めていました。同社では2018年初めに同年中の自動運転バス実用化計画を発表していました。その計画について、バイドゥはCESのブースにおいて、「実際に2018年に自動運転バス商業化をスタートさせたこと」「すでに中国全土21カ所で展開していること」、さらには「2018年7月より世界初のレベル4自動運転バスの量産化に入っていること」などを映像と共に誇らしげに発表していたのです。

【関連記事】テンセントの「ミニプログラム」がアップルの「アップストア」と全く異なる理由

プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NTTドコモ、 CARTAHDにTOB 親会社の電

ビジネス

パリ航空ショー、一部イスラエル企業に閉鎖命令 イス

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story