コラム

6歳の中国人の日本への難民申請を手伝ったら、炎上した

2018年08月20日(月)18時40分

デマで煽り、火のないところに火をつける輩がいる

ここまで読んでくださった読者の方は不思議に思われるだろう。「あれ? 炎上事件はどこにいった?」と。6歳のかわいそうな子供が日本国の保護を受けた、ただそれだけの話のどこに炎上要素があるのか、理解できないのではないか。私だって理解しがたい。

火のないところに無理矢理火を付けたのは、日本在住の中国人漫画家・孫向文だ。私がツイッターに子供の難民申請を手伝っていると書いたところ、彼は以下のようにつぶやいている。

(「李小牧の偽装難民ビジネスが始まり、沢山の中国人が問い合わせ殺到「生活保護をどれくらい貰える?」という質問も多いです」)


知人の子供の申請に付き添ったことを「難民偽装ビジネス」呼ばわりしているのだ。孫のデマに多くの日本人が釣られて憤っているようだ。

実際には私は一銭ももらっていない。手助けだけとはいえ、申請書の記入やら資料をそろえるやらで結構時間がかかっているのだが、ひどい話だ。

孫は「生活保護をどれくらい貰える?」という質問が多く寄せられたと書いているが、彼がツイッターでアップした画像には「難民には生活補助金が支給されますか?」という問い合わせが1つあるだけ。大半の日本人は中国語が読めないことをいいことに、適当なデマで煽っているのだ。

海外民主派と呼ばれる人々がいる。世界各国に住み、中国政府を批判する人々だ。だが彼らには何の力もなく、ただあれこれ偉そうなことを言うだけの存在だ。そんな彼らに中国を変えることはできない。ならば別の成果を出そうと始めたのが、内ゲバだ。

「あいつは中国のスパイだ」などとでっちあげては誹謗中傷を重ね、次々と人を陥れていく。その姿は無実の人々を吊し上げては殺していった文化大革命の紅衛兵とかぶる。海外に住み、中国政府を批判しながらも、その心性は中国人の暗部をそのまま残している。

中国について認めるべきところは認め、批判するべきところは批判する私のような人間は、彼らにとって目障りなのだろう。中国についてひたすら悪口を言い続け、意に沿わぬ人間を吊し上げる彼らのゲームに参加しない者は、全て敵と認定されるのだ。

そんなくだらないお遊びに関わるのは時間の無駄にしか思えない。そして、彼らのデマに釣られて、時間を無駄にする日本人がいることも残念に思う。より生産的なことに取り組むべきではないか。6歳の子供が「売国奴の子」と罵られる生活から抜け出す手助けのようなことを、だ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、金利変更の選択肢残すべき リスクに対応=仏

ビジネス

ECBは年内利下げせず、バークレイズとBofAが予

ビジネス

ユーロ圏10月消費者物価、前年比+2.1%にやや減

ワールド

エクソン、第3四半期利益が予想上回る 生産増が原油
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story