コラム

200万人の中国人が感動した熊本地震のウェブ動画

2016年06月06日(月)16時06分

 このたび二更は日本支社を設立した。その取締役CEOが何を隠そう、この李小牧だ。"政治家"(落選しても意欲があるかぎり政治家であると思うのだが、どうだろうか?)、レストラン経営者、貿易会社社長、ニューズウィーク日本版ウェブサイトのコラムニストに続いて、またひとつ肩書きが増えたことになる。

 二更には「二更視頻」「二更商業」「二更MV」などさまざまなチャンネルがあるが、この6月から杭州、北京、成都、上海という4つの都市チャンネルと経済チャンネルが新たにオープンする。さらに日本と北米で取材する海外チャンネルも開設する。私が取締役CEOを務める日本支社は「更日本」という日本チャンネルを担当するが、今秋開設を目指して準備を進めているところだ。

 チャンネルはまだ正式に始まってはいないが、熊本地震という大災害を伝えなければと、臨時に番組を作成した次第だ。最初に公開した動画は重い題材となってしまったが、今後はこの二更で、中国人が知らない日本文化について発信していく。今、中国ではちょっとした日本ブームで化粧品やら食品、赤ちゃん用品などが大人気だが、中国人が知っている日本製品はごくごく一部。口コミで評判が広がった商品しか売れていない。

 伝統工芸品を作る職人や田舎の観光地など、中国人がまだ知らない日本文化を動画で伝えていくのが目的だ。中国人は日本の新たな良さを知り、日本人は中国需要で利益を得る。私のビジネスは日中両国民に利益をもたらすものになると今からワクワクしている。

ネットにも完全な自由は(もちろん)ない

 さて、二更のような自媒体がなぜ中国で人気を得ているのだろうか。残念ながら、スマホ関連のビジネスに関しては中国は日本より一歩も二歩も先に行っている。二更もそのひとつ。自分たちで動画サイトを運営するのではなく、大手企業のプラットフォームを最大限に活用することで影響力を拡大している。コンテンツもスマホで視聴することを念頭にしており、1本10分未満と見やすい長さにおさめている。宣伝も微信や微博(ウェイボ)などのSNSが主流だ。

 視聴者の側にも理由がある。日本人ならば、ぽっと出の新興メディアよりもテレビや大新聞のほうが信用できると考えるだろうが、新聞やテレビなどの伝統メディアは政府の息がかかっているので信用できないと思うのが中国人だ。特に都市の若い中産層にはこの傾向が強い。彼らは新しいメディアでも、ちゃんとしたコンテンツを作ってネットの評判を勝ち得ているのならば信用できると思っているのだ。

 とはいえ、「スマホ先進国・中国では政府の息がかからない自由なネット動画が配信されていて、視聴者からも支持されている」で終わると美しいのだが、もちろんそんな単純な話ではない。残念なことにネット動画であれ、一線を踏み越えれば検閲の対象となる。今回の熊本地震の動画もそうだ。自衛隊の活躍についてはなるべく映さないように配慮した。また、避難所でルールを守る日本人の姿は写しても「それに比べて中国は......」という論調にならないように配慮している。そこは視聴者に行間を読み取ってもらうしかない。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ミネアポリスで数万人デモ、移民当局職員による女性

ワールド

米、来週にもベネズエラ制裁さらに解除=ベセント氏

ワールド

吉村・維新の会代表、冒頭解散「驚きない」 高市氏と

ワールド

イラン当局、騒乱拡大で取り締まり強化示唆 ネット遮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 8
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story