コラム

「少数派」石破政権はこれから、3つの難題に直面する

2024年11月19日(火)16時13分

トランプという鬼門

最後に対米関係が鬼門となる可能性がある。米大統領選と上院下院選に勝利して盤石の政権基盤を手に入れたドナルド・トランプ前大統領は今後、在日米軍駐留経費の負担増や米国製兵器購入の追加要求を突き付けてくるだろう。

石破首相は自民党総裁に選出される直前、米ハドソン研究所に「日米安保条約と地位協定を改定しグアムに自衛隊基地・拠点をつくる。中国を抑止するためにはアジア版NATO創設が不可欠であり、アジア版NATOでは米核兵器の共有や地域への核兵器導入を具体的に検討する必要がある」とした論文を寄稿している。

議員としての提言であり首相としての外交防衛政策とは異なると抗弁しても、1期目に欧州NATOからの脱退をちらつかせたトランプにしてみれば、ディールの材料として石破政権に負担増を突き付ける格好の題材になるだろう。

石破首相がいま直面しているのは、こうした3つの局面にどう向き合うかという難題だ。仮に政権のリソースを同時に3局面の対応に分散させることになれば、石破政権は間違いなく混乱のうちに短命で終わるだろう。少数与党政権を維持していくのであれば、政策資源配分のバランスを保ちつつ、取り組むべき課題を厳選し、臨機応変に「君子豹変」しつつ独り善がりになることなく、衆知を集めていくほかない。

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プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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