コラム

「今世紀に寿命は150歳に」習近平発言...中国の生命科学を示唆? 独裁者の「思い込み」が招くものとは

2025年09月04日(木)17時24分

厚いベールに覆われた中国の生命科学

翌17年に複数の反論が同誌に掲載され「極端値だけを見た統計は不安定」「選び方やグラフ解釈に問題」と方法論が批判された。17年には「超高齢域の死亡リスクが極端に高く、130歳超は極めてまれ。今後25年で128歳超はほぼ起きない」と予測する研究論文が発表された。

臓器置換やエピゲノムの制御、老化細胞除去といった生命科学は中国でも活発だが、150歳に直結する段階にはない。老化の生物学は未解明の部分が多いが、習氏の発言は厚いベールに覆われた中国の生命科学の未来を予言するものか判断がつかない。

しかし独裁者の思い込みが歴史的な悲劇を招いた例は数え切れない。「ドイツ民族は優れており、生存圏を拡大する権利がある」「ユダヤ人は劣等」というアドルフ・ヒトラーの思い込みがユダヤ人大虐殺を引き起こした。独裁者の「不老不死」談義はいったい何を意味するのか。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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