コラム

内憂外患のチャールズ英国王 ヘンリー&メーガンが年内に予定する「反乱」

2022年09月10日(土)13時26分

王室に刻まれた奴隷制の歴史

ヘンリー公爵とメーガン夫人の王室離脱の内幕を暴露した『自由を探して』の共同著者オミッド・スコビー氏は筆者に「植民地時代の過去や王室に深く刻まれた奴隷制の歴史とのつながりを元通りに戻すことはできません。しかし、それを認めることはできます。周りで起こっている他の社会問題も認めることができます」と語る。

「米白人警官による黒人男性暴行死事件で改めて火がついた人種差別撤廃運動『ブラック・ライブズ・マター』について王室は沈黙を守りました。それはヘンリー公爵とメーガン夫人がメディアだけでなく、家族内でも直面した問題です。カリブ海の英連邦王国訪問で抗議を受けるのも王室が賠償や奴隷の歴史について対話に参加するのを拒否しているからです」

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バッキンガム宮殿に入るチャールズ新国王とカミラ王妃(同)

19世紀の英思想家ウォルター・バジョットは国家が民主的になればなるほど、君主制はショー化して儀礼的になると喝破した。エリザベス女王の祖父、ジョージ5世(在位1910~36年)の伝記を著した英バッキンガム大学のジェーン・リドリー教授は「儀式、行列、ファン、軍楽隊これらすべてがこの国における君主制の魅力の多くを占めている」と解説する。

「君主制にはある種の魔法があるという考えがあるが、それをみんなの前に解放してしまうと失われてしまう。魔法に日の光を当ててしまうと魔法はもはや存在しなくなる。君主制の大きな課題はある種のミステリーや神秘性を保ち、完全な透明性を持たせないことだ。しかしその一方で今日、世間に知られずに何かをすることはほとんど不可能になった」

良き英国王の条件について「高い教育を受けている必要はない。しかし多くの人に会うので、会ったことを覚えている記憶力がいる。それと規律。毎晩、政府から送られてくる書類に目を通さなければならない。2~3時間は優にかかる。誰かと議論しても不機嫌になることは許されない。共感力も求められる。非常に難しく、疲れる仕事だ」と語る。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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