コラム

ウクライナ侵攻が始まった プーチン氏の攻撃性は追い詰められたヒグマの防衛本能か

2022年02月22日(火)21時35分

プーチン氏はウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を蛇の生殺し状態に追い込むつもりだろう。2019年秋には54%を超えていたゼレンスキー氏の政党支持率は直近で最低13%台まで下がっている。プライベートジェットでウクライナを逃げ出す富裕層が続出しているとも伝えられる。軍事的な圧力を徐々にエスカレートさせていけばゼレンスキー政権は内から崩壊し、親露派の傀儡政権を樹立できるチャンスが出てくる。

米紙ワシントン・ポストによると、バイデン米政権は国連人権高等弁務官宛ての書簡で「アメリカは、ロシアが軍事占領後に殺害するか収容所に送るかするウクライナ人のリストを作成していることを示す信頼できる情報を持っている。侵攻後の計画には拷問、強制的な失踪、広範囲にわたる苦痛が含まれている」と伝えたという。英情報機関によると、ロシアは傀儡政権をつくるために親露派の政治家と密接に連携している。

プーチン氏は「ロシアとベラルーシ、ウクライナの歴史的な統合」を自分のレガシー(遺産)にしようとしているように見えるが、それは強がりかもしれない。国境が2万キロを超えるロシアは潜在的に「攻撃」より「防衛」に軸足を置いている。プーチン氏の武力行使のパターンをみると、グルジア(現ジョージア)紛争でもクリミア併合でも、当初の計画が破綻し、土壇場に追い込まれた時、即座に武力を行使している。

「何もしないコストの方が大きい」

ヒグマがヒトを攻撃する時、防衛本能が攻撃性として現れるという。プーチン氏の攻撃性も同じ防衛本能とみることもできる。米シンクタンク、外交政策研究所のユーラシア担当ロブ・リー上級研究員は「ロシアはウクライナで軍事的に大きくエスカレートするコストよりも、何もしないコストの方が大きいと考えているようだ。クレムリンはウクライナを防衛力の増強を続ける永久の敵対国とみなしている」と指摘している。

「ゼレンスキー氏との関係改善に対するロシアの期待は2021年に打ち砕かれ、クレムリンは現在、拡大する北大西洋条約機構(NATO)とウクライナの防衛協力を止めるなど、ウクライナがもたらす長期的な安全保障上のリスクを軽減することに注力している。プーチン氏らが最も具体的に懸念しているのは、ウクライナに配備された長距離ミサイルが、数分でモスクワに到達する恐れがあるという潜在的な脅威だ」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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