コラム

COP26合意「赤字国債ならぬ『緑字国債』発行に期待」──和製ソロス 浅井將雄氏が語る

2021年11月18日(木)20時22分

──EUに続いて、イギリスもグリーンボンドを発行すると言っています。これは大きな流れを作っていくことになるのでしょうか

「もう間違いないと思います。これからのインフラを意識して、温室効果ガスの排出を抑制するため石炭火力発電を大幅に抑えて洋上風力発電など再生可能エネルギーを積極的に展開しています。環境に設備投資をしていく財源としてグリーンボンドを発行していくという意図的なエネルギー構造の転換を図っていて、いま電気やガスの料金の値上げを容認している段階だと思います」

「日本でも再生可能エネルギーが主体になってエネルギー価格の押し上げにつながるでしょう。負担を許容しながらグリーンインフラを作っていくことが世界の流れになってきているのではないでしょうか。岸田文雄首相も石炭火力発電を新たに海外に輸出していかないとコミットしていますが、30年段階で石炭火力発電の占める割合を19%に下げることしかできず、G7の中で最大になってしまいます」

「海に囲まれている日本ですが、イギリスと違って海底地形が急峻で、安定した洋上風力発電をつくることがまだ技術的に確立されていないという問題があります。引き続き石炭火力発電に依存していくのかどうか。やはり責任ある先進国として、技術革新を伴いながら次のステップに進まなければなりません。そのカギとしてグリーンボンドの発行を検討するという考えが日本の財務省の中にもあると思います」

──温暖化対策への投資には大きな可能性があるとお考えですか

「資金が流れ込むところにはチャンスがあります。逆に資金が流れ込まないところにはチャンスはありません。明らかにESG、特に環境、温暖化対策には資金が流れ込む流れになっています。そうした大きな流れの中で、しっかり資金を集める器をつくることは大きな成長の柱になると考えています」

──COP26を取材していて強く感じたのは、東日本大震災の福島原発事故で原発をあてにできなくなり、石炭火力発電を手放せなくなった日本と、脱炭素化に突き進む世界の温度差です

「ESGとはエンバイロメント(環境)のE、ソーシャル(社会)のS、ガバナンス(統治)のGで、日経新聞など、マスコミやメディアでも大きく取り上げられています。ESGの概念が定着した次のステップは、じゃあESGにどうやってわれわれ一般の人たちがアクセスすれば良いのかという問題です。こまめに電気を消して節電すれば良いのか。そういう簡単な疑問から実際に何をすれば良いのかを考えるのがESGインテグレーションです」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、18─19日に訪朝 金総書記招待と

ワールド

中国のEU産豚肉調査、スペインが交渉呼びかけ 「関

ワールド

パレスチナ自治政府、夏にも崩壊 状況深刻とノルウェ

ワールド

ロシア、拘束中のWSJ記者の交換で米国と接触=クレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 4

    顔も服も「若かりし頃のマドンナ」そのもの...マドン…

  • 5

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 6

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 7

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 8

    中国経済がはまる「日本型デフレ」の泥沼...消費心理…

  • 9

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 10

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 7

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story