コラム

日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること──(1)検査体制

2020年04月02日(木)17時22分

最近、日本政府は日本国内に感染者が増加すると、米中韓の全土やヨーロッパのほぼ全域など、新たに49の国と地域からの外国人の入国を拒否する方針を明らかにするなど水際対策を強化している。さらに、日本政府は海外からの全ての入国者に対して2週間の待機を要請することを検討している。海外からの水際対策は強化しているものの、日本国内の1億2700万人の検査に対する議論は大きく進展していない。日本政府や感染症の専門家が検査体制を拡充することに反対する主な理由は1)PCR検査の精度が高くない、2)検査を拡大した場合、検査を受けるために人が集まり、集団感染が起こる恐れがある、3)検査を拡大し、患者が増えると医療崩壊が発生する危険があるなどである。

「検査は多いほどいい」?

すべてが一理ある意見であるものの、最近、世界各国が実施している検査体制は日本とは少し異なるので気になる。累積感染者が100人を超えるまで1日の検査数が500件程度に過ぎなかったアメリカは、感染者が増加すると検査数を大幅に増やし、累計検査件数はすでに100万件を超えている。アメリカの感染者数は、最初に感染者が確認された1月21日から感染者が98人になった3月3日までには徐々に増加していたものの、その後は爆発的に増加し、4月1日時点での感染者数は21万5千人を超えている。アメリカの医療システムが日本とは異なるので直接比較することはできないものの、初期時点での検査が消極的だったことが事態を大きくした原因の一つである可能性は少なくないだろう。

軽症者に対する検査を重視してきたドイツも検査の拡大に注力しており、現在では1週間に約50万件の検査が行われている。イギリス政府も1日に2万5千件の検査ができるように検査体制を強化するなど、ヨーロッパ全体で検査を拡大している傾向が強い。

長い間アメリカのCDCの顧問を担当したヴァンダービルト大学の感染症専門家ウィリアム・シャフナー教授は、3月5日の香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストとのインタビューで「韓国は新型コロナウイルス研究の立派な実験の場である。検査を多くするほど致死率が正確になり、全体図が完成できる」と韓国の検査体制を評価した。また、CNNとのインタビューで「無症状、軽症の感染は新型コロナウイルス拡散の主な要因であり、地域社会内の感染の主な要因になるだろう」(3月15日韓国連合ニュース引用)と話した。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UPS貨物機墜落、ブラックボックス回収 地上の犠牲

ワールド

米運輸省、7日に4%の減便開始 航空管制官不足で=

ビジネス

テスラ、10月ドイツ販売台数は前年比53%減 9倍

ビジネス

AI競争、米国と中国の差「ナノ秒単位」とエヌビディ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story