コラム

トランプは関税発動とインフレ退治のどちらを優先? ついに見えてきた「トランプ経済」の中身

2025年04月03日(木)18時28分
トランプ大統領に迫る関税とインフレの板挟み

KEVIN LAMARQUEーREUTERS

<大統領選当時から互いに矛盾する公約や方針を掲げてきたトランプ氏によって市場に漂っていた「不確実性」は、やっと排除されてきたとみてよいだろう>

何が飛び出すか分からないと各国を不安に陥れていたトランプ米大統領だが、経済政策に関しておおよその方向性が見えてきた。トランプ氏は選挙対策もあり、相互に矛盾する公約や方針を掲げることも珍しくなかった。だが政権運営が始まれば、いずれかを犠牲にせざるを得なくなる。

現状では、関税の実施に伴う景気後退を防ぐため利下げを行う一方で、インフレは甘受する方向性になる可能性が高い。


トランプ氏は選挙戦を通じて、輸入関税と不法移民の強制退去を公約として掲げてきた。これらを実施すればアメリカのインフレが激しくなる可能性が高い。インフレを抑制するには中央銀行が積極的に利上げを行う必要が出てくるが、金利を上げれば景気後退リスクが高まってしまう。

トランプ氏はインフレ抑制を最優先するFRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長を度々批判しており、大統領に就任した後は、利下げを求めるとも述べていた。インフレが進むなか、利下げを行えば、さらにインフレが加速する可能性があり、このあたりについてトランプ氏がどう考えているのか、各国の専門家は考えあぐねていた。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story