コラム

中小企業が賃上げできない、日本の「特殊」な要因...公取の「活発な動き」には大きな意味がある

2024年03月28日(木)17時41分

大企業の過度な買いたたき抑制には大きな意味が

中長期的にはこうした状況を改善するための企業再編の支援など、大規模な産業政策が必要となってくるが、こうした政策が効果を発揮するまでには時間がかかる。一方で、日本の低賃金問題は喫緊の課題であり、政府による介入で大企業の過度な買いたたきを抑制することには大きな意味がある。

今年の春闘では、昨年に引き続いて大手企業はそれなりの回答を出しているが、賃上げを行ったシワ寄せが取引先に及ぶようでは本末転倒である。国内のGDPは、2四半期連続でマイナスという壊滅的状況であり、とりわけ消費の低迷が著しい。最大の要因は賃金が伸びず、個人の購買力が拡大しないからである。

公取の一連の活動は広く中小企業の賃上げを進める原動力となるはずであり、当分の間、活発な活動を継続していくべきだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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