コラム

実体経済と株高の行方は? 2021年の世界経済を占う

2021年01月08日(金)12時02分

MARRIO31ーISTOCK

<今年の経済・社会を読み解くキーワードは「ポストコロナ」「バイデン政権」「脱炭素」の3つだ>

2020年はコロナ危機で大変な1年だった。足元では感染者数の増加が顕著だが、国民がコロナに慣れたこともあり、今年は感染が拡大しても昨年ほどの混乱は生じないだろう。だが経済的、社会的にはより大きな変化が起きる可能性が高い。今年の経済・社会を読み解くキーワードは「ポストコロナ」「バイデン政権」「脱炭素」の3つである。

昨年の秋以降、全世界的にコロナの感染が再拡大しているが、一方で株価は堅調に推移し、米株式市場のダウ平均株価は3万ドルの大台を突破した。製薬大手がワクチンを開発したことで、楽観ムードが出てきたことも影響しているが、感染が拡大しているにもかかわらず株価が上昇している最大の理由は、コロナ危機をきっかけとした産業構造の転換を市場が強く期待しているからである。

実際、株高を主導しているのはIT企業であり、デリバリーやテレワークなど経済活動の非接触化を市場が促していると解釈できる。株価が過度に上昇し、実体経済と乖離が生じているのは間違いないが、もし産業構造のシフトが進み、社会のほうが変われば、長期的には株価が正当化される可能性もあるだろう。

脱炭素のカギを握るのはIT

社会のIT化は脱炭素とも密接に関係している。これまでアメリカはかたくなに環境問題に背を向けてきたが、バイデン新政権は脱炭素に舵を切る方針を表明。日本も菅義偉首相が50年までの温室効果ガス排出量ゼロを宣言するなど、ここにきて各国の足並みが一気にそろい始めた。

脱炭素社会の主役となるのはEV(電気自動車)と分散電力システムであり、どちらもITがカギを握る。つまりポストコロナ社会とバイデン政権誕生、そして脱炭素シフトは水面下で全てつながっており、コロナを機に変化が一気に早まったと考えたほうがよい。

コロナ危機から特に大きな影響を受けた外食産業では、想像以上にデリバリー化の動きが進む可能性が高く、他の業種でもクラウドを使った各種サービスの導入やキャッシュレス化など、従来予想以上のペースで新しい商習慣が定着すると考えられる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾総統、強権的な指導者崇拝を批判 中国軍事パレー

ワールド

セルビアはロシアとの協力関係の改善望む=ブチッチ大

ワールド

EU気候変動目標の交渉、フランスが首脳レベルへの引

ワールド

米高裁も不法移民送還に違法判断、政権の「敵性外国人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story