コラム

持続化給付金「中抜き」疑惑とアベノマスク──不透明取引の「経済性」を読み解く

2020年06月17日(水)12時21分

税金を使った政府の買い物である政府調達の手続きは会計法などで厳格に定められており、政府は最大限、透明性を確保する義務がある。政府は今回の案件について詳細を速やかに公表すべきだろう。

前回のアベノマスクは、複数の事業者に価格を競わせる競争入札ではなく、特定事業者に発注する随意契約で実施されたことが問題視された。今回は競争入札の形式にはなっているが、価格以外についても点数化を行う総合評価方式であり、場合によっては特定の事業者しか落札できないよう工夫することも不可能ではない。政府は入札の詳細について情報開示を拒んでいるが、これでは疑惑を指摘されても仕方ないだろう。

19年度におけるGDPベースの政府支出は111兆6500億円もある。GDP全体の約2割を占める政府支出が経済に与える影響は大きい。この一部が再委託(丸投げ)という形で中抜きされてしまうと、そのお金は有効に活用されず、誰かの所得になるだけで経済の持続的な成長に寄与しない。

調達の透明性を高めることは、民主主義の根幹であると同時に経済政策でもある。お金の使い方を見ればその人となりが分かるという話は、当然のことながら政府にも当てはまるはずだ。

<本誌2020年6月23日号掲載>

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2020年6月23日号(6月16日発売)は「コロナ時代の個人情報」特集。各国で採用が進む「スマホで接触追跡・感染監視」システムの是非。第2波を防ぐため、プライバシーは諦めるべきなのか。コロナ危機はまだ終わっていない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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