コラム

財務省人事から考える、年金減額と消費増税のシナリオ

2019年07月30日(火)14時40分

来年、国会への提出が検討されている社会保障制度改革法案の内容は明らかにされていないが、マクロ経済スライドの強化が盛り込まれる可能性が高い。現在のマクロ経済スライドは、物価上昇時にそれを打ち消す形で年金を減額する仕組みだが、政府内部では物価の上下にかかわらず、年金給付額を削減するプランが検討されている。

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もう一つは、70歳からが上限となっている年金支給年齢の引き上げである。

現在、標準的な年金の支給開始年齢は65歳だが、本人が希望すれば、年金を増額した上で70歳まで支給を遅らせることができる。これを75歳以上まで引き上げることで、稼ぎのある高齢者への支給を抑制したい意向だ。あくまで本人の希望ということだが、この施策の最終的な狙いは、標準的な年金支給開始年齢についても70歳まで引き上げることである。近い将来、年金は70歳からしかもらえなくなる可能性が高い。

政府は参院選への影響を配慮したのか、本来、選挙前に出るはずだった「年金財政検証」の結果公表を遅らせている。今回の財政検証でどの程度までの減額が明記されるのか要注目である。従来よりも踏み込んだ数字が記載された場合、給付削減と消費再増税の確度は高まったと判断してよいだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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