コラム

アルゼンチンが経済危機を繰り返す最大の理由

2018年05月15日(火)17時00分

最悪の事態になる前に正しい選択をしたマクリ大統領だが、国民は抗議デモで反発 Marcos Brindicci-REUTERS

<財政危機を招いているのは、国民の自業自得? 自国が貧しくなったとしても国民が欲しいものとは...>

アルゼンチンが通貨ペソの急落を受けて、IMF(国際通貨基金)に支援を要請した。早い段階での支援要請は理屈の上では正しい決断だが、政治的にこれがどう作用するのかは分からない。

前政権はバラマキと経済への介入を続けてきた

アルゼンチンはこれまで何度もデフォルト(債務不履行)を起こしており、経済破綻の代名詞のようになっている。前回(2001年)のデフォルトでは、債務を返済できなくなった国債を新しい国債に交換する債務再編を実施。危機の原因のひとつとされた固定相場制を見直し、変動相場制に移行した。通貨ペソを切り下げることで、国際競争力を回復しようという試みである。

当初はこうした施策が功を奏し、経済は順調な回復を見せたが、2010年頃からフェルナンデス前政権のバラマキ体質や経済介入の影響が顕著となり、再び経済が停滞し始めた。2010年から2015年の間に政府債務は4.7倍に拡大し、政府債務のGDP比が50%を超えるなど、一度は健全化した財政も再び悪化してきた。

GDPの200%という巨額の政府債務を抱える日本の感覚からすると、GDPの半分の債務で経済が不安定化するというのは意外に思うかもしれないが、先進国でも政府債務のGDP比は100%以下が望ましいとされており、米国は100%、ドイツは65%程度に収まっている(EUは60%以下が目安)。アルゼンチンのように経済の基礎体力が小さい国の場合、GDPの50%程度でも不安定化することがある。

財政赤字の拡大に伴って通貨ペソが再び下落を始めたが、フェルナンデス政権はこれに対して為替介入を実施。国民の外貨保有を制限するとともに、海外旅行への支出に対して課税するなど露骨な経済統制を実施した。その結果、アルゼンチン国内では米ドルベースの闇市が拡大してインフレが加速。公定レートと実勢レートの乖離はひどくなるばかりであった。

こうした統制的な経済に対して国民の不満が高まり、2015年の大統領選挙では市場重視を掲げる現マクリ大統領が選出された。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

為替円安「極めて遺憾で憂慮」、あらゆる手段排除せず

ワールド

通常国会の早期に解散、高市首相から伝達 詳細は19

ビジネス

中国、大手オンライン旅行会社を調査 独禁法違反の疑

ビジネス

中国石炭輸入、12月が過去最高に 25年通年は1割
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    「普通じゃない...」「凶器だ」飛行機の荷物棚から「…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story