コラム

大塚家具が2期連続の赤字で「かぐや(家具屋)姫」大ピンチ。再建のカギを握るのは貸会議室?

2018年02月20日(火)13時20分

背後で構造的な問題が進行している可能性も

大塚家具はつきっきりの接客がウリだったが、中価格帯の商品を得意としており、いわゆる高級家具店ではなかった。しかし家計所得の減少によって消費者の購買力が低下したことに加え、ニトリやイケアといった安価な家具メーカーが台頭したことから、大塚家具の商品は相対的に高くなった。同社がどれほど意図していたのかは分からないが、高級イメージになっていたのは事実である。

久美子氏は、お家騒動と会員制の廃止によって「低価格の商品が中心になる」「サービスが低下する」といった負のイメージが広がり、これが顧客離れを起こしたと説明している。久美子氏が経営権を握って以降、同社の商品構成が大きく変わったわけではないので、久美子氏の主張も理解できなくはない。

確かに急激な業績悪化については、騒動によるイメージダウンが大きく影響していると考えられる。だが一方で、根源的な問題が進行している可能性も否定できない。それは日本の人口動態の変化である。

価格帯が異なるので直接の競合ではないが、家具大手のニトリとイケアは、大塚家具にとってある種のライバルといってよい。ニトリは人口減少による都市部への集中化にいちはやく対応。小型店舗を積極的に展開しており、業績は絶好超である。一方、郊外の大型店舗が中心のイケアは業績が低迷しており、大幅な値下げに踏み切った。

大塚家具も業績の足を引っ張っているのは郊外の大型店舗であり、これは構造的な問題である可能性が高い。現在、新しい接客方法も含め店舗運営の最適化を図っている最中だが、構造的な要因が大きいのだとすると、予定通りの業績回復は難しくなる。

久美子氏が経営権を完全掌握してからの同社は、売上高が毎年減少し、粗利益率も低下している。これに加えて、在庫の回転期間が長期化するなど、商品の流れが悪くなっている。業績悪化の原因が単純にオペレーション上の問題であれば、そろそろ商品の流れは回復してもよい頃だが、まだ成果は出ていない。

貸会議室企業との資本提携で店舗スペースの収益化を狙う

こうした中、同社は貸会議室運営大手のTKPと資本提携している。昨年11月、大塚家具が持つ自己株式約10億円をTKPが引き受け、TKPは発行済み株式数の6.65%を持つ大株主となった。6.65%という数字は、創業家の資産管理会社の持ち分である6.66%を超えないようにする措置と考えられる。

当面は、大塚家具の余剰店舗スペースを貸会議室などに転用することで収益化を図るプランが計画されている。大塚家具は売上高の減少に対応するため、店舗スペースの縮小を進めているが、大型店舗の場合、すぐに代替店舗が見つかるとは限らない。同社は過去3年間で店舗スペースを11%減らしたが、売上高は30%減少しており、事業の縮小ペースに追いついていないのが実情だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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