コラム

ビットコインが一時50万円を突破! 投機かそうでないか判断のポイントは?

2017年09月12日(火)12時30分

結局、ビットコイン取引所など、ビットコインの運営に関わる人たちの間で議論が行われ、多数決に近い形で仕様変更が決定された。しかし一部の関係者が結果に納得せず、ビットコインが分裂してしまったというのが今回の騒動である。大方の予想通り、新しい仮想通貨であるビットコインキャッシュを支持した人は少なく、ビットコインの状況に大きな変化はなかった。

騒動が終結しそうだという情報が流れると、市場には再び資金が流入し、価格は再び上昇。8月に入ると、さらに上昇スピードに弾みが付き8月中旬には45万円を、9月には一時50万円を突破した。中国政府が10月の党大会を前に取引所の規制に乗り出したことで、一時的に価格は下落したものの規制は限定的との見方も多い。

こうした動きに対して、一部から「投機である」「危険だ」といった声が出ている。あまりにも急激な上昇だったことを考えると、こうした指摘が出てくるのは当然のことかもしれないが、ここは少し落ち着いて状況を分析した方がよいだろう。

既存の通貨には上限が見えていたが......

確かに、ビットコイン市場に流入している資金のほとんどは投機目的と考えられる。だが株式や債券と異なり、ビットコインは事実上の無国籍通貨であることを考えると、投機かそうでないかという議論はあまり意味をなさない。

例えば株式なら、発行する会社が生み出す利益や配当など、株式が持つ根源的な価値という部分において、ある程度の上限が決まってくる。ネット企業の株価はバブルになりやすいが、いくらネット企業の成長力に対して過大な期待が寄せられたからといって、無限大に株価が上昇するわけではない。

通貨も同様で、通貨を発行する国が持っている基本的な経済体力を超えて通貨を発行することはできない。無理にそれを行えば、インフレが進行し、その通貨は大幅に減価してしまうだろう。ちなみに日本の中央銀行である日本銀行のマネタリーベースは約470兆円、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のマネタリーベースは約500兆円となっている。

ところがビットコインはどの政府も管理しない無国籍通貨であり、これが世界にどの程度、流通するのか誰にも分からない。もしグローバルな無国籍通貨としてのニーズが今後も高まるのであれば、ビットコインはさらに普及するだろうし、こうしたニーズが存在しないのであれば、ビットコインを使う人は減り、通貨の価値も下落するだろう。

現在、ビットコインの時価総額は7兆円程度しかなく、既存の通貨と比べれば「お遊びの」領域を出ていない。しかし、ビットコインが国際的な決算手段として本格的に普及することになれば、世界にはまだまだビットコインに対するニーズが存在することになる。

金利の低下から全世界的な運用難になっており、世界中の資金が運用先を探しているという状況に加え、地政学的リスクの高まりから、資金の避難先として物色されやすい環境が整っている。ビットコインに対するニーズがどこまで拡大するのかは、まだまだ分からないのだ。

【参考記事】量子コンピューターがビットコインを滅ぼす日
【参考記事】ビットコイン技術が難民救う!? 11億人「デジタルID」化構想

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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