「公的年金が数兆円の運用損!」が、想定内のニュースである理由

7~9月期の運用損が7兆~10兆円と見込まれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の三谷隆博理事長 Toru Hanai- REUTERS
〔ここに注目〕変更された運用方針
公的年金の運用に巨額損失が出ているという話が市場関係者の間で取り沙汰されている。一部メディアでは10兆円の損失などと報じられたが、まだ知らない人も多いだろう。
7~9月期における運用実績の公表は11月中の予定だが、これまでの株価の動きを考えると数兆円の損失が出ていることはほぼ間違いない。あまりに巨額なのでびっくりする人もいるかもしれないが、この金額は専門家の間では想定されていた水準であり、特に驚くべきものではない。日本の公的年金はすでに株式を中心としたリスク運用にシフトしており、株価が大きく変動すれば年金運用も変動する仕組みになっているからである。
日本の公的年金は株式中心のリスク運用
日本の公的年金を運用しているのはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という組織だが、現在、GPIFの運用残高は140兆円ほどになっている。これまでGPIFは、積立金のほとんどを安全な国債で運用してきたが、安倍政権になり、運用方針の抜本的な見直しが進められた。インフレが進むと債権価格が下落するため、債権中心のポートフォリオでは損失が発生するリスクが出てくるというのがその理由だ。
昨年10月にまとめられた新しい運用方針では、国債の比率が60%から35%に低下し、国内株の比率は逆に12%から25%に引き上げられた。外国株を合わせると全体の50%が株式という構成になっている。
こうした運用方針の見直しについては、一部から株価対策ではないのかという批判が出ていた。実際、GPIFのポートフォリオ変更に伴って、数兆円の資金が株式市場に流入しており、空前の株高が演出された。結果として、2014年度(通年)の運用実績は15兆2922億円のプラス、2015年4~6月期の運用実績も2兆6489兆円のプラスであった。GPIFは自らの買いで株価を押し上げ、高い運用実績を上げたのである。
だがポートフォリオの変更に伴う資金流入はそろそろ終了するタイミングであり、今後は自らの買いによる株価上昇は期待できない。運用資金の約半分が株式に投入されていれば、当然、今後の運用益は株式市場の動向に大きく依存することになる。
8月に入って株式市場は、中国ショックをきっかけとした全世界的な株価下落に見舞われた。当然のことながら、7~9月期の運用成績はその影響を受ける。6月末時点におけるGPIFの日本株の比率は23.4%、外国株の比率は22.3%であり、合計すると45.7%が株式で運用されていた。6月末時点から現在までの間に、日経平均は約14%、ダウ平均株価は約8%下落しているが、外国株は米国株のみと仮定し、機械的にこの数字を当てはめると約7兆円の損失が発生している計算になる。
報道では、証券アナリストの試算として8兆円という数字が取り上げられている。外国株の銘柄をどう見るのかで最終的な数字は変わってくるが、おおよそ7兆円から10兆円の範囲になる可能性が高いだろう。
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